ILL-BOSSTINO(THA BLUE HERB) MONTHLY REPORT 2009.12

ただいま。久々、ここに帰ってきました。皆、元気だった?もう季節は秋を通り越して冬です。札幌は雪こそまだだけどかなーり寒いです。そっちは?

8月、鹿児島のライブを終えて、レコーディングして、レーベルの仕事終わらせてってとこまでここで話してたね。あの後、レコーディングした曲達は
もう世の中に出て行ったモノもあるね。クラムボンとの曲、G.CUEとの曲、それぞれ見かけやスタイルは異なって見えるかもしれないけれど、両方とも
俺の中から出てきた言葉だ。絶望であったり、怒りであったり、憤りであったり、否応無しにのしかかってくる色んな後ろ向きな力に、つぶされねえぞ、
跳ね返してやるぞっていう気持ちが両方の曲の歌詞には秘められている。赤い血が根底に通っている。言いたいこと、言わなくてはならないと信じている
こと、言わせてくれる場所があることには感謝している。それを共感してくれたり、拒絶してくれたり、良いと言ってくれたり、悪いと言ってくれたり、
反応にも赤い血が通っている。それで十分だ。全ての人が同じ考えにならない所に、このビジネスの面白みがある。俺等が俺等の居場所を見つけることが
できたのも、この面白みが(当時はとても面白みと思う余裕はなかったけど)空腹で路頭に迷っていた俺等を招いてくれたからだ。この世界のどこかに
きっと解ってくれる人がいる。いつもそう信じていた。孤独に閉じ込められて、そこに安らぎすら見出すくらい、長く底にいたけれど、理解を、まだ見ぬ
理解を待ち望んでいた。渇望していた。今、大勢の人が俺等のことを知ってくれている。会ったこともない人と自分等の産み出した音楽で繋がっている。
時に感謝されることすらある。時に憎まれることすらある。その感謝という柔らかな、しかし次への期待を多分に込めたありがたき気持ちに、そして憎しみ
という、のし上がることが全ての世界では一見最も有効な、そのありがたき気持ちに、俺はつぶされねえぞ、跳ね返してやるぞって、今も思っている。

8月に録ったもう1曲、SEEDAとの曲は12月23日にCDが発売になります。追ってアナログも出ます。曲名は「WISDOM」。CDはなんと315円。
8月以降も関わっている皆が手を加え、長い時間をかけて大切に育ててきたんだ。良いよ〜。マジで。今年締めるにはばっちりっしょ。SEEDAと名乗る、
もはや原石ではない、研磨されまくったMCの輝きに導かれ、前向きなイメージの彼方に、俺も新たな希望を見出すことができた。誘ってくれて感謝です。


9月頭から11月中頃までの2ヶ月半、久々にニューヨークにアパート借りて住んでました。全員が「個性的」という言葉で括れるくらいパワフルな人々に
紛れて生きてました。22歳くらいに初めて行って以来、かれこれもう6回目。最近はマスタリングとか仕事で行くことが続いてたけど、今回はみっちり地に、
アスファルトに足を着けて、360度から常に沸き上がっているインスピレーションを五感見開いて吸収してきました。あの頃、初めて行った時は俺はまだMC
じゃなかった。路上ではMAD LIONの「TAKE IT EASY」やCRAIG MACKの「FLAVA IN YA EAR」が1日中かかりまくってた。今回は、着いたばっかりの頃は
RAEKWON、そして後はずっとJAY-Zが街を歩くと聴こえてきてた。テキ屋の持ってる小さなラジオや、その横を爆音で通り過ぎるレクサスから。ワールド
シリーズでのJAY-Zのライブにも驚いた(無論、松井も半端なかったね)。帰ってきてから読んだ「EMPIRE STATE OF MIND」のリリックのリアルさにも
後になってトバされた。ヒップホップは15年前に行った時より、あり得ないくらいデカくなってた。まるで後戻りできずに転がり落ちる石のように。あまりに
巨大で、日本から来た、今さら格好に憧れているわけではない俺にはファンタジーの世界だった。BBQやハーレムの俺の世代の人達はどう感じているのだろう?

でもダンスフロアーは、そう、アンダーグラウンドなダンスフロアーは相変わらず、何も変わらず、滅っ茶苦茶リアルだった。小さな、入口に誰も並んでいない、
エントランス料金もタダなクラブでも、この世の果てのおとぎの国のようなサウスブロンクスのロフトでも、曜日問わず人種問わず新旧問わずに、音楽を心から
愛し、理解し、その日のDJと言葉を介さない会話がテレパシーでできるダンサーが大勢いた。そこでは、叫び声と歌声と話し声が、音楽と自然に調和していて、
シンプルで普遍的なメッセージに溢れていた。それがちゃんと俺にも聴き取れた。マジで札幌のいつも行くパーティーと全っ然変わらなかった!取り囲んでいる
サーカスの登場人物のようなダンサー達のぶっ飛びぶりは、目を奪われるくらい凄すぎて、そこはダントツで日本とは違ったけれど、俺の心の中の問題、つまり
俺がその場にいて感じるメッセージは同じだった。YAKKOさんと同じ!そしてそのメッセージを受け止め、今度は俺から発するメッセージも同じ。で、それを
受け止める隣人のリアクションも同じ。同じすぎて笑えるくらい同じ。そういう感覚になったのは今回のニューヨークが初めてだったかもしれない。万人の憧れに
常に輝いているニューヨーク。人も、モノも無限にひしめいていると思っていたニューヨーク。いつも何かを与えてくれる対象としてのみ見ていたニューヨーク。
でも2ヶ月後くらいに気付いた。ダンスフロアーで会う人の顔ぶれはそんなに変わらない。ここは小さな世界なんだ。アンダーグラウンドなダンスミュージックの
コミュニティは、つまり、世間は小さな世界だった。皆の名前も顔もすぐに憶えれるくらい。皆、さりげなく挨拶して入ってきて、段々人が増えていって、帰る
人もさりげなく挨拶して出て行って、結局いつもの顔ぶれになって最後の1曲を見送る。そして電気が付いて、皆、挨拶して別れる。普通の、よくある世界。
どこのダンスフロアーに行っても、居場所なんて自分が創ろうとすればちゃんとあった。いつ行っても、このパーティーが特別なんだと思えば自然とそうなった。
今思えば、大きな懐の中で遊ばせてもらっていたんだと思う。進んでも進んでも辿り着く事のない地下社会の奥のそのまた奥で。皆、いい顔してたな。

ただ与えてくれるのを待っていては夜は終わってしまう。時間は短い。すぐに旅は、人生は終わってしまう。皆待っているんだ。アクションを。リアクションを。
それぞれが作用しあってこの世界は形成されているんだ。俺も、君も、それぞれが1つずつの要素で、自ら自らを1歩前に出して作用させれば、世界は変化する。

本当に沢山の人にお世話になりました。皆のおかげで本当に有意義な時間を過ごすことができました。ありがとうございました。また会う日までそのまま元気で!

EARTH PHOTOに写真あります。


DJ DYEがミックスCD出します。昨年も「SEASONAL BEST」4部作を発表していましたが、今回は国産ダンスミュージックに焦点を当てた作品となってます。
「JAPADAPTA」シリーズの第2弾。第1弾はDJ BAKUでしたね。DJ DYEでしかあり得ない選曲となってます。発売は12月16日です。お楽しみに。

早速ライブが始まっています。札幌でもライブあります!気付けば昨年の秋以来やってなかったね。ブッキングのタイミングが合わなくてズルズルと年末まで
来てしまった。愛する地元、札幌で活動を始めてこれほど時間が空いたのは初めてだ。1度もやらないってわけにはいかないっしょってことで、TBHR祭を
フィルモアノースと共同開催します。前売り券は速攻で売り切れました。ありがとう。この報告には上げられました。皆のアンテナの感度に敬意を表します。
入場は当日券のみとなります。フライヤー持参で3000円、無しの場合は3500円です。入れないってことはないと思いますが、早めに来てください。
週末ではないのですが、ライブが全て終わっても23:30(予定)。無論、俺等としては最後のDJ HIKARUも半端ないので、一緒に着陸したいと思ってます。
年末、パーティーは沢山あるし、仕事もそれぞれ大事な時期だと思います。それぞれの貴重な時間に応えるべく俺等もベストを尽くします。楽しみましょう!

復帰1発目は初上陸、町田。そこは古くからの友人、山仁の地元。山仁は俺が初めて会った東京の、いや札幌以外の土地のMC。15年以上前に六本木で会い
フリースタイルして遊んで以来。その場には沢山のMCがいたけれど、今もマイクを持っているのはもう俺と山仁だけになったな。ライブでも言ったけどさ、
15年後に俺は絶対生き残ってると思ったけど、もう1人が山仁だとは思わなかった。でも、俺はその日、ずっと心から思っていた。山仁で良かったな、と。
良い夜だった。町田の愛すべき仲間達もQ-ILLを始めとして、皆、歓迎してくれた。初めて行く街とは思えないくらい、ましてや3ヶ月半ぶりのライブとは
思えないくらい俺等はリラックスしていた。ライブ本番もがっつり気持ちを入れることができた。皆がそれぞれ持ち寄った熱意がダンスフロアーをはみ出し、
ライブのイントロの段階からステージに充満していた。年末ツアーの初っ端から最高に楽しかったです。最後の輝ける拍手の中、俺はここを生き残ってきたし、
そしてここで生きていくんだと改めて思ってました。ありがとうございました。終わってからの打ち上げもヤバすぎた。あんな笑ったの久々だったぜ。ピース!

復帰2発目は今年4月の未だ忘れ難いマージービートでの最高の夜以来の神戸。終わりのない旅が続くぜ。2週に渡って行われてきたパーティーの2日目。神戸
着陸は昼1時。出番は夜3時半。長い時間みっちり楽しんだ。朝日で喰ったビーフカツも旨すぎた。ニューヨークで買い逃したレコードも買えた。箱は上屋劇場。
共演者も大勢いて、この日初めて話した人も、ずっと前から知っている人も大勢いて、SDPの面々も前週の町田以来だし、あちこちで話の輪ができてて、もう既に
リハの段階からワイワイおもろかったな。今回はPAにサニーさんも来てくれていたんで音も心配なし。リハ後肉喰ってしばらくホテルで休んで、会場に向かう。
お客、めっちゃ入ってたね。上がったぜ。持ち時間は俺等にとっては短めの1時間だったんで、この日はあれこれ能書きなしに突っ走るセット。登場するや速攻
沸騰する空気。こっちも他の共演者に埋没するわけにはいかねえから余計に力が入ってたよ。あっという間の1時間だったけど、俺が言いたいことは全て言えた。
ありがとうございました。もう神戸でのライブは数えきれないくらいやってるけど、いつも力もらってます。神戸のMCの皆、聴こえてくる音、楽しみにしてます。

2009年も気付けば残りわずか。今年もゴールはまたもや極寒の北見。そこの、あの朝を目指して1MC1DJで列島を駆け抜けるぜ。そこで、底で会おう。

健康で。
ILL-B