ILL-BOSSTINO(THA BLUE HERB) MONTHLY REPORT 2015.01

NEW YEAR'S DAY!

2015年明けましておめでとうございます。昨年中も色々な人に助けてもらいながら無事ここまで辿り着く事が出来ました。基本、ライブばかりの1年でした。
世の中の流行とは気付けば大きく離れていた俺等と俺等の音楽です。それでもそこに価値を見出してくれた皆のおかげです。実際に観に来てくれた人、本当に
ありがとうございました。結果良いか悪いかのどちらにしても、とにかく、その夜にそこに居合わせたその人との関わりの中で生きてきました。唯一、言葉を
介して。計55本のライブ、以前のように景気も良くない世の中、それで食ってる人ばかりではない中、気持ち込めてその夜の運営を仕切ってくれた皆、本当に
ありがとうございました。ポスター、フライヤー、口コミ、つぶやき、情報を拡散してくれた皆、本当にありがとうございました。全ての夜に後悔は残しては
いません。誰と比べるとかでもありません。今ある曲達をフルに使い切り、ステージで表現し尽くしました。あれ以上は今の時点ではありません。秋冬、観て
いただいたあのライブが今の俺等の、THA BLUE HERBの至高です。そう言い切ってしまえる程、俺等はギリギリまで完璧へと近づきました。不完全な俺等で
もそれを垣間見ました。そして、そう、ここが潮時です。ここに留まる事は容易いですが、停滞こそが命取りです。まだやってない事は俺にもある。以前から
アナウンスしていましたが、今年はしばらくライブはやりません。アウトプットを暫し閉じ、学びと気付きの季節を経て、曲創りに専念したいと思ってます。
ただ、PHASE 4までのような長い時間はかけません。サクサクやります。まずは俺のソロアルバムに向けて既に動き出しています。新たな挑戦が始まります。

実質俺のTBHRからのソロデビューとなった般若とgrooveman Spotとの「NEW YEAR'S DAY」。着想から発売まで時間もない中、各方面の職人達の素早い
仕事のおかげで無事発売する事が出来ました。ありがとうございました。12月、今はもう全て過ぎ去ってしまいましたが、1年の最後のライブの最後、そこに
皆で辿り着けたささやかな安堵を込めてキックしてきました。悲しみや怒りよりも笑顔が似合う曲っす。俺はそういう曲も書くようになりました。変化は常に
起こっています。まだ今の段階では何も見えてはいませんが、43歳のラッパーが何を言っていくのか、俺自身も楽しみになってます。今はそんな年明けです。
本当に今の時代は希望の差し込む余地がどんどん狭まっているので、ラッパーの時代が隆盛を続けるはずです。俺はそこには希望を持っています。俺の事だけ
ではなくて、マジでヤバいラッパー、ビートメイカーが一杯いるからね。平凡なラブソング(それ自体悪いと言ってるのではありません)だけでは、現実から
目を逸らすためには役立つかもしれないけれど、リスナーもそこまで夢想ばかりしてはいられない、待ったなしな今日、それが愛でも反抗でも、どっちにしろ
ファンタジーな歌じゃなく、本当の事を言ってるか、これが全て。平和で安定した時代じゃないが、表現には良い時代。そこに希望がある。これからっしょ。


般若と対談してきました。お互いの印象、ライブ美学、日本のヒップホップの今昔など、多岐に渡って話してます。こちらこちら


THA BLUE HERB、この秋冬モデルのTシャツ、年末のライブ会場で売ってましたが、TBHRのオンラインショップで発売します。発売は1月6日からです。
予告ページはこちらから


1月11日祝前日にCALMさんとのJAPANESE SYNCHRO SYSTEMで仙台にDJで行きます。場所はパンゲア。面白い事をいつもやってる箱と記憶しています。
21:00から朝9:00まで12時間。CALMさんと4、5曲交代で延々やってます。出来れば1曲目から来てほしいね。新年早々ですが、よろしくです。



ここからはツアーレポートを。
年明けからはソロアルバムの完成に向けて動いていくので、THA BLUE HERBのライブは開始時期すらも不明です。なので12月の8本が実質「TOTAL」以降の
ライブ修練の終着駅でした。大切な時期だと皆が知ってくれていて、どこも外は寒かったが濃密な夜達。ドラマティックな別れを与えてくれて感謝してます。

名古屋。きっちり1年ぶり。今年は近郊でのライブが多かった。満を持してって感じだったね。迎える側からもそんな気迫を感じてました。舞台はJB'S。年末
気分がそろそろ加速してきて、あちこち賑やかになってくる時期、しかも052。ここは絶対に外せねえ。なのでPA、照明帯同でフルセットで乗り込みました。
出演者も若手からベテラン、東海エリアを代表する強者ばかり。特にラッパー達からは、丁寧な挨拶ではとても隠し切れてない誇りと負けず嫌いがビシビシと
はみ出てました。上等。やったるか。俺等は90分だ。それでカタ付ける。カウンター付近の賑やかなお客を軽くイジリながら進めてく。大丈夫。皆連れてく。
札幌の俺から見たらヒップホップのスタイルの幅が昔から超広い街、名古屋。そのどれにも当てはまらない俺等を見つけて、実際に足を運んでくれるお客達。
熱く、暑いライブが出来ました。いつも最高ですが、あの夜も最幸でした。ありがとうございました。阿部ちゃん、ワッシー、和尚、お世話になりました。

京都。我々の第2の故郷。俺等が一方的に勝手にそう言ってるワケじゃねえよ。1999年の11月からずっと深めてきた俺等と京都のストーリーがある。もう今は
顔を出さない仲間もいる。死んでった仲間も。お客はどんどん入れ替わっていく。それでも京都のライブでしか起こりえない、得体の知れない魔の刻がある。
舞台はMETRO。もう何度目かは分からん。お互い気心は知れてる。それでもいつだって崖っぷちな心境だ。何故だろう。多分、ずっと頂点をここで更新して
きたからだろうな。ワンゲームでも外したら真っ逆さまってやつよ。この夜も共演者は、隙があればその夜の全てをいただいてしまおうとしてる一癖も二癖も
ある奴等ばかり!丑三つ時過ぎ、その時は来た。1200年の都、数々の荒くれ者どもが天下に号令しようとやって来ては去っていった街。今年の冬は俺等だ。
全開100分。間違いなんて起こらねえ。取るべくして取った。想いの全てはそこに置いてきました。ありがとうございました。カズ、お世話になりました。

東京、中野。1999年5月2日、俺等が北海道以外で初めてライブをやった夜、そこに中野からやって来た森田貴宏と出会った。そして一夜明けて、俺等は待ち
合わせ、彼の運転で中野のFATBROSというお店に行ったんだ。その日から始まった俺等と中野の交流も気づけば15年経ってた。時代、俺等を取り巻く時代、
そして俺等自身も大きく変わった。だけど俺は今も時々中野に行くと、あの頃を思い出し、そしてあの頃の気持ちを取り戻すんだ。それはもう過ぎてしまった
時なんだけど、皆、あの頃より15年分大人になったけど、それでも何というかスケーター独特なヤンチャさがあって、笑いがあって、そして変わらぬ仲間が
いる。記念すべきFATBROSの20周年。競演も縁のある音楽家ばかり。俺等がトリをやらせてもらったんだけど、正直、誰がやっても良かった、と思ってる。
あの最後の萩原さんの挨拶があれば、ね。寒空の下、世の中は投票日。結果は暗黒世界、お先真っ暗でも、心は暖かかった。中野、ありがとうございました!

山形。2年ぶり。ここも通算何度目なんだろうね。夏も良いけどさ、俺はやっぱり寒さに閉ざされたあの地下1階で分け合う人の熱を感じられる今の季節が好き
なんだ。早めに着いたのでレコ屋巡りを。山形、さすがに文化度が高いから、良いアナログが今も沢山ある。見つけ、磨いて、丁寧に並べてある。何というか
効率だけを求めていない豊かさを山形ではいつも感じてる。舞台はもちろん!ホームSANDINISTA。帰ってきたぜ。ここには腕の良いPAがいる。行く度にDYE
と2人で探求してる。この日も良い音が仕上がってた。本番。俺等の前は庄内エリアから参戦した葉花源吸。昨年の強烈な出会いの1人。また会えて上がった。
あのスタイルは他はいないね。良い仕事してた。じゃあやるか。出音は無論、セットもコンディションも万全。言葉がクリアに心に浸透していくのが見えた。
そして皆の心の高揚も。思ってる事は同じだった、俺は今でもそう思ってるよ。ばっちり繋がれたね。ありがとうございました。八鍬、お世話になりました。

宇都宮。ここも相当昔から行ってまして、ホームグラウンドは時代毎に変わってきてます。今はNEST。もう3年連続です。行く店は変わっても、それこそ10年
以上、支えてくれている人は変わらない。バーテンも変わらない!一昨年はTOTALリリースツアー、そして昨年はNESTの10周年。でも今年は何の冠もなし。
でも、ちゃんと集まってくれてた。これには上げられました。前列の怒号を伴ったサポート、そして逆光の照明の向こう側に影だけ浮かび、揺れている人達。
各自の遊び方、感じ方で付き合ってくれた。しかも互い干渉せず、皆がそれぞれ独りでステージの俺等と対峙していた。洗練された関係性だ。長く共に時間を
経てきた信頼が間にちゃんとある。そこまでしてもらって期待は裏切れねえ。俺等は絶対に裏切らねえ。如何にして最後まで皆を連れて行くか。結果、俺等と
皆の大金星。半端ない高さまで行けた。あれはありそうで中々ないぜ。ありがとうございました。吉田君、サトシ、ハルキ、仲間の皆、お世話になりました。

静岡。約2年ぶり。浜松は今年も行ってたけれど、静岡はまたちょっと街の雰囲気が違うのね。新しさと古さが良いバランスで混在してる。都内から新幹線で
快晴の富士山を眺めながら到着。朝霧の夜を思い出す。今夜は接近戦必至の様相。まずは400年間続いてるお店で自然薯食べて鋭気を養う。舞台はSUNASH。
着くと地元の音楽家が鳴らしてた。色んなスタイルがあって楽しめた。からの俺等の登場です。この夜のライブが凄かった。何というか、お客の人数は特別に
多いわけではなかった。けれど一人一人の熱意が半端なく、それぞれのノリの調和も素晴らしく、盛り上がったとかだけではない(超盛り上がったけどね)、
テレパシーでお互いの想いを交換し尽くした感がめちゃ残ってます。ありがとうございました。ステージからは一人一人の顔がよく見えた。瞳の奥の涙もね。
このタイミングでここまでの高みを見せてもらいマジで今年1年分の努力が報われました。感無量ってやつっす。HIROMATIC、ユウキ、お世話になりました。

大阪。半年ぶり。祭確定な夜。メンツも間違い無し。舞台はSUNHALL。続々出演者が集まってくる。KIREEKのHI-C、DJ A-1、KO-JI ZERO THREE、そして
SHINGO★西成。大阪に縁のある実力者が揃った。誰がどの順番で出ても楽しい事になる。俺等はトリ、光栄だ。穏やかに談笑してても、そこは皆がプロ中の
プロ。メラメラしてた。間違いないパフォーマンスが続き少しずつフロアーの熱量が増していく。そしてそれはSHINGO★西成で沸点を迎えた。地元で観れて
良かった。あんな兄さんがいてくれて大阪のヘッズは幸せだね。本番前にして、俺も感動しちゃってた。ただ、俺等もやらなきゃならん。彼等には彼等にしか
出来ない事があるように、俺等にしか出来ない事がある。ここで何も残せずに帰るわけにはいかねえ。追い込まれた手負いの俺等、持てる力を全て注ぎ全霊で
やらせていただきました。ありがとうございました。激闘後の乾杯、からの打ち上げ、互いの健闘を讃え合い、大いに笑った。倉世古、お世話になりました。

東京、恵比寿、リキッドルーム。今年も1番多くライブをやらせてもらった街はここ東京でした。数え切れないラッパー、音楽家、パーティーが乱立してる街、
しかも週末、しかも年末。俺等もここを今年最後と狙いを定め準備してきました。相手は般若。ライブのオファーを受けてから、この夜の最後にキックする
曲を創り、録音して、発売して、インタビューして、般若と顔を何度も合わせました。お互いの事は随分理解し合えたと思ってます。そしてライブだけが残り
ました。全てはこの夜のために俺等は動いてきました。今、全てを終えた翌日の夜、札幌に戻る羽田空港のラウンジでこの文を書いてます。お互い今の時点で
出来るベストは尽くしました。年末、その日が仕事納めだった人も多かったはずです。そして変わらず忙しい毎日の中、来てくれた人。一人一人、最後まで
見届けてくれた皆、ありがとうございました。楽しかった、楽しくなかった、勝った、負けた、変わった、変わらなかった、評価はそれぞれにお任せします。
あれだけの数のお客、緊張感、及ぼすであろう影響、取り囲むプレッシャーに囲まれ、1本のマイクだけでステージに出て行く。罵りで削り合わずに。あくまで
プロに徹して、お客の方へ出て行く。開場の瞬間から、俺も般若もお互いを見てるようで見てなかった。視線はただ一点、お客を見ていた。最後の最後、あの
輝きの中で「NEW YEAR'S DAY」のサビを歌い終えた時点で、横にいた般若が俺に肩を組んできた。同時にパッと目の前の大勢のお客の顔が明るくなった。
あの瞬間、俺も般若も頑張ったな、負けず嫌いだろうが頑張れるのがヒップホップだよな、そして最後はUNITYだよな、やっぱりヒップホップは最高だなって
思ってた。この数ヶ月が報われた。自分の弱さ、到らなさ、未熟さは、自分が1番知っている。危うさも。だから、俺は調和を求める。それを他人のせいには
しない。現時点での持てる力、言葉の力を全て使って、理解し合える部分を探し、提示し、調和を希求する。43歳のヒップホップが、もっと若い世代のそれと
違い、無駄なディスり合いをしない事を退屈に思う人もいるかもしれない。俺も若かったらそう思ったかもしれない。事実、かつて上の人間を削って、自分の
居場所を強奪したのは俺だ。今更、自分だけ安全な所に引っ込む事は許されないだろう。そんな事は解ってる。俺の中の邪悪さは、消えてなんかいない。いつ
どこでどのタイミングで立ち現れるのか、俺にも解らない。そうなったら、全てを捨ててでも俺はやるだろう。ルールなんかない、とことんまでやるだろう。
俺はそうなった時の自分の怖さを知ってる。だから調和を求める。あの90分のライブに全てを懸ける。もう調和しか選択肢はないっていう所まで自分を連れて
行く。俺に巣食う悪も、ひがみも、妬みも、恨みも、全部浄化する所まで。笑ってその夜を終えるために。別れるために。あれが俺のヒップホップだ。以上。



1曲贈ろう

今年も皆、それぞれ、やりたい事が見つかる事を、もうある人はそれを成し遂げられる事を願ってます。お互い頑張ろう。そしてどこかでまた元気に会おう!

ILL-B