ILL-BOSSTINO(THA BLUE HERB) MONTHLY REPORT 2016.10

10月。こちらは既に秋の入り口です。

9月は大きなライブが続きました。最近、フリースタイルバトルの流行からだと俺は思ってるんだけど、色々なフェスの、しかもステージで、ラッパーを見かける
事が多くなった。これは今年から感じる傾向だ。そしてロックフェスのお客の側にもヒップホップの面白さが伝わり始めていて、とても自然にヒップホップと
そのライブを楽しんでる。それこそ10年前とかは、ヒップホップどころかライブで生のドラムを使わないのは俺等だけっていうフェスも普通だった。この変化は
俺等がずっと頑張ってきたから、とかじゃない。俺等は俺等で勝手にやってきた。これは明らかにフリースタイルバトルの方からの流れだ。俺は参加してないし、
あの流行から学ぶ事も、ない。関わる事はこれからもきっと、ない。でも、同じヒップホップなわけ。だから現場でその流れに乗って来ているラッパーに出会う
事はある。そして俺はこの流れの延長にある出会いを好意的に受け止めている。そりゃそうだ。ヒップホップの看板掲げて来てるの俺等だけっていうのがいつも
だったんだから。所謂ロックフェスで、ラッパーに会えて、話せて、同じステージを分け合えるのは、楽しいに決まってる。それによって俺等のヒップホップも
また際立つってもんよ。全てを観たわけではないって事を前提で言うけど、上げるにしてもハメるにしても、それでもまだデカいフェスのデカいステージで60分
がっつり観せるに耐え得るラッパーは、多くはない。少なくとも俺にとってはね。そもそもあの場はバトルじゃないし、深夜の皆が酔っているクラブじゃない。
でも、それも過程だ。彼等も気付いている。自身が身を置いている流行に浮かれ上がってる奴等はいない。学び、克服し、すぐにそこを突破してくるラッパーが
現れる事だろう。化け物みたいなバンド達と同じステージで同じ60分を与えられて、バンドには鳴らせないヒップホップならではの表現で、お客にそのフェスで
1番ヤバかったと言わせるラッパーが。輝ける時代が近くに来ている。俺等はそんな人達と同じステージを分け合う時を待っているんだ。そこまで精進続けよう。


10月、11月はライブを休みます。12月は既にスケジュールが出てます。どこも興味深い夜ばかり。前売りが売り切れる恐れがある夜もありますので、お早めに。


以下、ライブレポート。2月から計51本のライブ。各会場、仕切ってくれた人、そして集まってくれた人、ありがとうございました。

BAYCAMP。例年オファーを受けていたのですが、中々タイミングが合わなかった。今年遂に初出場。都心の野外フェスは久々な感じ。羽田からスタジオ練習後
川崎へ。バックヤードでは久々な音楽家との再会が沢山あって、話が途切れず、良い時間を過ごしてました。俺等の出番は23:55から。ある意味1番良い時間とも
言える。初出場の俺等にこの時間を任せてくれる主催の心意気を感じておりました。ただ、俺等の始まる前から天気が荒れ始めていて、雨が激しく、お客も結構
テントとかに避難を始めてた。そして雨の中、それでも待っててくれてる人達。俺はその様子をステージの隅から見ていた。始めよう。奇跡を起こすには申し分
ない状況だ。お客だけをずぶ濡れにするわけにはいかねえ。俺もステージ前方ギリギリまで出て行く。風雨の中、困難は極まっていたが、それでも俺等を上げて
くれる人達と共に、場の熱量は上がっていった。前向きなメッセージが明確になっていく流れそのままに、そこにいた皆でそのまま登り詰めた。気付けば雨は
止んでいた!その間、35分。とても劇的だった。ありがとうございました。長くやってますがあんな事は滅多にない。スタッフの皆さん、お疲れさまでした。

SUNSET LIVE。ここも初出場。しかし予報では台風が直撃する恐れがあって、当日の朝まで開催出来るかどうかが微妙な様相だった。まず飛行機が飛べるのか
すらも危うい感じでしたが、無事福岡に着陸。迎えに来てくれたヒッキーやマンティス一行と共に糸島へ向かう。雨は降っていない。でもすぐ近くまで台風は
来ているらしく、一体どうなるのか、予断を許さない状況だった。でも会場に着くと、そんな心配もどこ吹く風なノリで楽しみまくってるお客が沢山いた。あち
こち楽しみで満ちていた。とても良い雰囲気で、俺等も一気にリラックス出来た。ステージ裏に着くとちょうどR-指定がライブしてて、お客を上げまくってた。
いいね。他にもラッパーが沢山出ている。一気に気合いが入ったよ。しかも俺等の後はライムスター。長年この仕事やってるがこの並びは初めてだった。ここで
がっつりカマすために今まで続けてきたんだ。初めての場でしたが、いつも通り表現全うして、大喝采の中、皆と笑って別れられた。ありがとうございました。
ステージ降りると迎えてくれたのはライムスター。ジン君は現場で何度も会ってるし、シロウ君も久々。そしてMummy-D!ここが殆ど初対面。知っての通り、
色々あったからね。でも、笑顔で会えたんだ。俺はとても嬉しかった。この瞬間のために20年かかった。でも、それだけの時間をかけた甲斐があった。その後の
ライムスターのライブも良かったし、バックヤードの若いラッパーや客席のB-BOY達もこの並び、邂逅の意味を知ってくれていて、しかも皆が上がってくれてて
最高な雰囲気だったよ。バトルとか全盛の今、それもヒップホップなんだけどさ、こうしてヒップホップのもう1つの理想、つまりユニティってやつをさ、俺等と
ライムスターで、それもステージでバシッと提示出来た意味は大きい。お互いが自分達のスタイルを突っ張り通した結果の20年後だからね。感動でした。ライム
スターの後は大トリのマイティークラウン。こちらも彼等なりのやり方でがっつり盛り上げまくって祭を締めていた。お見事。名物の夕焼けも綺麗に見れたし、
雨も降らず、バッチリ楽しめました。あれで台風で中止になってたらって考えると、色々と起こった事を想うと、前日の川崎も含めて奇跡みたいな週末でした。
その後博多に戻り、運転してくれたヒッキーやマンティス達とやまちゃんで打ち上げて、その後ライムスターとマイティークラウンと合流して、これまたがっつり
呑みました。3チームともデカい仕事をやり遂げた後の達成感で上がってて、沢山話して、笑って、良い夜だったなぁ。スタッフの皆さん、お疲れさまでした。

札幌。連続2日間。どちらも趣向が違う感じなので、そこも含めて楽しみにしてました。初日は芸術の森で行われたSOULWAVEというダンススタジオの10周年
パーティー。俺も昔はダンサーだったんですよ。格好だけだったけどね。だから出番待ってる間も、今のダンサー達のショーを沢山観れて楽しめました。しかし
ダンサーのショーが主体のイベントで、俺等のライブがどこまで受け入れられるのかという心配は少なからずあった。ライブとして招かれていたのはLIL'J(「WE
WERE, WE ARE」のビートを創った男)、B.I.G. JOE。そして俺等。俺等の出番が最後だった。先攻の2組共、その見えない垣根を越えるために、丁寧に真摯に
メッセージと音とを投げかけていた。俺はその様を袖で観ていた。からの俺等。ステージに出て行って思ったけど、そこには既に心の距離はないに等しかった。
皆、真剣な眼差しでこっちを観ている。やるしかない。通じるはずだと信じて俺等も出来るベストを尽くした。最後はいつもの景色になっていたよ。ありがとう
ございました。10周年の記念すべき夜に大事な役目を与えてくれて、しかも受け止めてくれて、報われました。力也、お疲れさまでした&10周年おめでとう!

2日目。舞台はベッシーホール。この夜はスープカリーイエローの20周年。ライブはYOU THE ROCK★、B.I.G. JOE、俺等。3者共、1MC1DJのスタイル。それ
ぞれ長きに渡ってマイク1本で生きてきた。俺とYOU THE ROCK★も色々あった。とっくに邂逅は果たしていたし、去年一緒に曲も創ってた。だけど、俺等の
地元札幌ではまだ披露していなかった。「ラッパーの一分」も出たばかり。皆、そこも観た上で、何が起きたのかを知った上で集まってる。大事な夜だ。先攻は
YOU THE ROCK★。2番手B.I.G. JOE。両者、バックDJのDA-15とSEIJIさんの個性も発揮したライブだった。B.I.G. JOEの途中から俺が入っていって、2人の
新曲も披露。俺とJOEが札幌の物語を歌う。そのリアルさを知っている仲間達が観ている。意味深い時間だったね。からの俺等。昨年末以来のベッシーホール。
この夜もオーディエンスのサポートのおかげで最高に楽しめた。ありがとうございました。そして「44 YEARS OLD」。3月の松本に続き、ばっちり。札幌で
俺とYOU THE ROCK★が同じステージに立つ。前週のライムスターの時と同様、記念すべき到達点だった。高橋君、お疲れさまでした&20周年おめでとう!

1週ライブを休んで久々にCALMさんとのJAPANESE SYNCHRO SYSTEM名義でDJしてました。東京青山ゼロの11時間。北海道北見UNDERSTANDの15時間。
無数の曲達がその夜の空気に溶けていくのを見届けた。事実、泣ける程の感動が沢山あった。両日とも長い時間を付き合っていただきありがとうございました。

東京中野。2年前の12月のあの駅前の野外パーティー以来の帰還。舞台はヘビーシックゼロ。対バンはこちらも久々のSKILLKILLS。前に下北沢で一緒になって
こんな奴等がいるんだって驚いたし嬉しかった。再び相見える夜、しかも中野、前売りも完売。昂ってたよ。先攻はSKILLKILLS。相変わらずぶっ飛びと緻密さが
同居したライブ。世界でも奴等だけじゃない?超オリジナル。未見の人は絶対観た方が良いよ。からの俺等。あの空間に130人詰め込んでいたから、灼熱覚悟で
挑んだけど、確かに空気は薄く、環境は過酷だったけど、それでも精一杯の限りをやり遂げる事が出来た。オーディエンスの側にも超接近戦の中、誰もが集中を
絶やさず言葉に聴き入る緊張感があった。でも少しずつそれらはほぐれていって、結果最後は穏やかさに包まれる感じで終えられた。ありがとうございました。
俺等と中野の歴史も17年目だ。ただの馬鹿騒ぎを越えて、互いのライフストーリーの成熟や変化を共有出来る所まで来てるのを感じた。また会う日まで達者で。
終演後はアフターパーティー。DJの1番手はO.N.O!2番手は森田貴宏!その後も延々と色々な音楽がかかり続けた中野の夜でした。実穂、お疲れさまでした。

りんご音楽祭。ここもずっと出てみたいと思っていたフェス。3月の松本ライブで良い感じで繋がれての初出場となりました。前から思っていて、着いてすぐ確信
したんだけど、昔出たKAIKOOに近いカオス感があった。で、これももう1つの特徴っていうか、これが今の流れなんだけど、ラッパーが沢山出てる!ここまで
沢山出てる大規模なフェスはないね。あちこちで聴こえてくるラップとそれに上がってるお客とが、とても新鮮な空気感を作ってて、沢山のラッパー、音楽家と
再会を重ねて、色々なライブを観て過ごしながら、俺もワクワクしまくってました。出番はトリ前の18:20。辺りはすっかり暗くなっていた。始めよう。俺等に
とっても今年の2月から続けてきたライブ修練の集大成的な50分間だった。深さ、高さ、共に今の最深、最高まで行けた。冥王星と未来、どちらもとても遠い
ものではあるが、言葉でギリギリまで近づけた。そしてぱっと散らせた。噂だけで、初めて観るという人も多かったと思う。最後にステージから見た景色がまだ
目に焼き付いている。皆のおかげでぶっ飛べました。あれがTHA BLUE HERBです。ありがとうございました。古川君、スタッフの皆さん、お疲れさまでした。


良い秋を!

ILL-B