ILL-BOSSTINO(THA BLUE HERB) MONTHLY REPORT 2016.12

12月。
今年もあと1ヶ月となりました。

11月下旬に枯葉舞い散る秋のニューヨークから帰ってきてみたら、こちら札幌は雪が舞い散る冬でした。キューバから渡ったニューヨーク、今回も既に長い付き
合いになっている友人達にお世話になりながらの3週間、その間、アメリカ大統領選挙があり、俺の予想とは真逆な結果も含めて、特別な時間に身を置いている
実感がありました。アメリカという国の中にある多様性、これがプラスの方向に作用していると、ニューヨークでは常に街中の場面で感じられ、そこがあの街の
大好きな所なのですが、しかしながらアメリカは広く、中部や南部ではその多様性がマイナスに作用していて、様々な軋轢を生んでいるのもまた現実で、この
分断が如実に表れる結果になりました。この波紋はやがて日本にも届く事でしょう。変化が、それもこちらにとって良くない変化が訪れる予感もしております。

もう1つ、ニューヨーク滞在中、とても大きな出来事がありました。俺がニューヨークに行く理由、それ自体にとても大きな影響を与えた人が亡くなりました。
ヒップホップしか知らなかった俺が、1997年秋にプレシャスホールの階段を降りて行った夜から始まった、長い長い旅。それは知識を伴う探求でもあり、心の
深淵を掘り下げる個人的な思索でもあり、それらよりももっと単純な、踊るという行為そのものでもあります。とにかく、音楽を聴いて楽しむという事。それも
楽しみ続けるという事。それと並行して、自分の周りの人や環境との調和を求め保つために、どう生きていくのか?この禅にも似た修養の根源にいる人でした。
彼が始めた事が、時間と距離を越えて札幌まで遂に届き、それを理解する先輩の招きを経て、俺もその価値に気付けて、今の自分の音楽への姿勢は形成された。
同時に詩作への姿勢も形成された。この喪失はとても重い。各々がダンスフロアで、彼と共に聴いた曲達と共に、各々の思い出と永く向き合う事になるだろう。

そして11月の終わりにもたらされたもう1つの訃報。フィデル・カストロの死。最後まで生き残っていた本物中の本物の革命家。先月までキューバにいたので、
常にリズムが聴こえてくる、陽気で賑やかな街並や人々の記憶と共に、様々な想いが駆け巡っている。トランプの登場と、カストロの退場。時代は大きく揺れ
動いている。遠い世界の果ての出来事とは思えない。その只中に身を置いてる実感がある。そうなのだ。自らが参加する権利を行使するかどうかの問題なのだ。
何も起こらない、怠惰で退屈な時代に見えるかい?この劇場では誰もが主役だ。保守でも革新でも、異なる理想を撹拌するのだ。新しい時代はその混乱の中から
生まれる。歩みを止めてはならない。イーストヴィレッジでも、ハバナでも、去っていった両者の偉業を知ってる人は、静寂の中に祈りを込めている事だろう。
だが彼等彼女等が再び前向きなリズムを取り戻す日は必ず来る。悲しみを胸に抱きつつも、一時の生を無駄するな、これが俺に遺ったメッセージだ。続けよう。


OLEDICKFOGGYというバンド知ってる?俺自身、最近知りました。もし知らないなら、あなたにはまだ新しい楽しみが残っている事になる。まずはこちらを。
札幌でこの数年よくポスターやフライヤーでその名前を目にしていたんですが、今年に入ってから仲間の車や、ライブ後の朝方のダンスフロアで楽曲を耳にする
機会があって、すげえ良いな〜って思ってて、今年の年末の京都でツーマンライブのオファーが来まして、もちろんその話を受けて、どうせだったらどっかで
会って呑もうぜってなって、今年の8月、本当に自然な成り行きで知り合えました。で、酒が進んで、音楽話が熱くなれば、これもいつもの自然な流れですが、
一緒に曲創ろうぜ!ってなるもので、で、速攻で創っちゃいました。そこまでの詳しい経緯はOLEDICKFOGGYの歌い手である伊藤雄和と俺との対談がこちらで
公開されています。
俺自身、久々となるバンドとのレコーディングでした。ヒップホップとは作業自体が全然違うのですが、別にそこに苦はなく、メンバー達も
凄腕揃いでして、アイディアをあれこれとノリで足し合っているうちに、気付けば化け物級の曲が出来上がってました。当初は全く想像していなかった所まで
ぶっ飛んじゃってました。久々の初期衝動に導かれ、規格外で壮絶な曲になりました。タイトルは「弾丸さえあれば」。1曲勝負。CDで出します。発売は1月。
CDの詳細は来月詳しく。で、その前に12月16日の京都でのOLEDICKFOGGYとのツーマンライブで披露します。ドカーンとやっちゃうよ〜。よろしくです!


12月23日に大阪Loft PlusOneで自身初となるトークライブを開催します。俺が進行しながら、ゲストをお迎えして色々話すという企画。記念すべき第1回目の
ゲストは札幌からSLANGのKO!THA BLUE HERBのファーストアルバムをCDでリリースしているレーベルのボスでもあります。20年近く、ずっと背中を見て
きたおっかねえ先輩です。現場で会ったりとかが殆どだったので、ゆっくり話すのは初めてに近くて、聞いてみたい事も沢山あり、とても楽しみにしています。


さあ年末のライブツアーが始まります。スケジュールはこちらから。各会場、どこも楽しみなブッキングです。4年ぶりとなる水戸。そこで過ごしてきた熱い夜を
忘れた事はありません。早く帰りたいと常に考えていました。筑波ではライブ後にO.N.OとDYEのDJでアフターパーティーもあり、それも個人的に楽しみにして
います。広島と神戸はクラムボンとのツーマンツアー!京都は前述したOLEDICKFOGGYとのツーマン。毎回沸点を超えるライブになる岡山は移転後のYEBISU
YA PROに初登場。和歌山も念願叶い4年ぶりの帰還。クリスマスイブの名古屋は相変わらずの最狂なメンツ。そして毎年恒例になった感もある東京でのワンマン
ライブで2016年のライブを締めます。2年連続でリキッドルームでしたが、今年は渋谷WWW Xでの開催になります。俺も10月にオーディエンスとして行ったの
ですが、天井も高く、音も良くて、面白くなるイメージを持っています。今はDYEとの練習の日々です。皆の参加をお待ちしています。よろしくお願いします。


今年も色々ありましたね。無傷ではないのは皆が同じでしょう。だからこそ、最後をド派手に楽しみたい。生き残ってここまで辿り着けた事を、再会を祝って、
手付かずな次の一周に向けて弾みをつけ、笑って別れたい。こっちはそう思っております。忙しい時期と思いますが、それぞれやり遂げて、一緒に遊ぼうぜ〜!

会えない皆も、どうか良い年末、新年を。

ILL-B