MESSAGE FROM BOSS

2008.5.1(#2)
そして初登場、東京、中野HEAVY SICK ZERO。中野は俺等にとっては特別な街だ。説明不要FESNの本拠地であり、俺等がいつも着てるLIBEの発信源FATBROSもある。9年前、あの六本木コアの夜に俺等と、中野代表森田貴弘が出会って以来、何度となく訪れた街。今回はINOUTというイベントのシークレットゲスト。いつもと違いシークレットゲストとなると、ライブに挑む気持ちが微妙に変わってくる。そこのオーディエンスは俺等が来るのを知らないってことになる。そもそも俺等を知らない人も沢山来てる。そんな時は、もうぶっ放すだけ。後先考えねえで畳み掛けるだけ。圧倒するだけ。はっきり言って、良かったか悪かったかの2つしかない。その中間はない。俺等が欲しいのはその両極のどちらかだけ。グチャグチャに人間がひしめく地下の底、45分、音速で駆け抜け、俺等は底を後にした。残ったのは多くの衝撃と、いつものようにわずかの「俺に言ってたのか?」という勘ぐりのみ。お情けなし、生々しい無心雑青葉流奥義。底に居合わせた全員へ、また遊ぼうぜ。

翌日は中野でオフ。って言うか前の日の酒をじっくり抜いてた。余韻はたっぷり残っていたけれど、翌日は洒落じゃすまねえ大勝負だ。絶対安静で養生。

そしてやって来た、KAIKOO meets REVOLUTION。中野からFESNの運転で途中、ひるがおで極上塩ダレつけ麺喰って、向かう舞台は横浜ZAIM。近辺は人、人、また人。どう見てもこの中でとんでもねえ事が起こってる雰囲気がバリバリ漂ってる。上がったねえ。中は、色んな部屋があって、そうだな、学校祭みたいだ。しかし学校祭と決定的に違うのは、各部屋で鳴いてる音楽。これでもかって位、今の日本で尖りまくってる奴らが、どの部屋にもウジャウジャいるんだ、これが。うーん、キテる。しばらくウロウロしていたけれど、本番近し。控え室は、強者達でリラックス感の中に隠しようのない緊張感が漂っていた。外にはありえねえ数のオーディエンス。始まる前の時点で、舞台監督から「もう空気がなくなってきてるんでなるべく早めに出てくれませんか?」と。「どうせ出てったら空気なんてなくなっちまうんで、もう少しゆっくりさせて下さい。」と俺。しっかり間合いを計って、DYEがステージに登る。絶叫と怒号。THA BLUE HERB SAPPORAWの登場。そこからの45分は・・・凄かったな。久々の究極の向こう側の景色を垣間見ていたよ。去年の京都METRO、宇都宮PLANET、大阪BLACK CHAMBER並の強烈すぎる暑さ、熱さ、空気の薄さ。地獄の黙示録級。もはや綺麗にやるとか上手くやるとかじゃねえ、1曲、1曲を必死に、文字通り必死に乗り越えて行くだけ。オーディエンス共々、熱気にただ耐えて、耐えて、耐え抜く。その間も口は休まずに動き続ける。魂焦がしたぜ。あ・れ・ぞ、死に物狂い。底で受け止めてくれた皆、本当にありがとう!君達一人一人を含めた俺等THA BLUE HERBの長い歴史においても、忘れられない、語り継がれて行く刹那の1つであったと思う。あの場で言った通り、皆も解っていると思うけれども、もうあの時間は流れて行ってしまった。時間はいつも、流れて行くのみだ。でも俺はずっと忘れねえよ。

もはや言葉になってない無数の叫びを背中に、どしゃ降りのステージを降り、袖の楽屋に戻る。中には45分前よりも更に研ぎすまされた緊張感と共にこの後出る2組の音楽家達が。俺とDYEがその緊張感の度合いを1段階上げた事は明白だった。俺も何も言わずに、ドカッと1人用の椅子に腰掛け、ひたすら失った水分を補給し、静かに回復を待つ。叫びたくなる様な、沸き上がる達成感と共に、俺は楽屋の景色を眺めていた。「この後を頼みます」そして楽屋を後にした。1度ホテルに戻り、荷物を置いて、再び水分補給して、またZAIMに戻る。最初に会ったのは漢を筆頭にLIBRA RECORDS CREW。太華(久々会った同い年)や数年ぶりのシャーリー、そして初対面のMCも大勢いたけれど皆、GOOD VIBES。軽く話して、再びさっきまで俺がライブをしていた部屋へ。ステージには一人の男が。OKI!そう、俺等の後のアクトもFROM 北海道、OKI DUB AINU BAND。観るのは久々だったけれど、前回観た時よりも格段レベルが上がってた。半端ねえ。超絶なバンドのテクも凄えし、伝えようとしてる事も素晴らしかった。俺も知らない、行った事がない北海道の景色が目に浮かんできてた。そしてこれまた久々聴くPA、内田直之の出音も強烈。ドラムの雷鳴に打たれまくってた。地をはうヒロヒサのBASSも油断すっと速攻捕まえにくる。OKIさん!ばっちりだったぜ。同じ時代に、同じ島から、同じ箱で、両方の音楽を余裕で受け入れている素晴らしいオーディエンス達の前で、あの時間と場所を分け合えて光栄ですよ、俺は。偉大なるライバルに乾杯だ!そして大トリ、TURTLE ISLAND。このバンドも噂にはヤバい、ヤバい聞いてたけれど、噂を軽く超えてた。驚愕。この日のラストを飾るに相応しいパフォーマンスだった。半端ねえ。
混乱を引き連れるブレないどこまでも直線的なドラム群。奇跡的な光景が、浮び、砕け、浮かび、消えて行った。一見、暴力的なまでに破壊的なリズムの応酬なのに(それだけでも充分新しい)、女性的というか、母性的な包容力がある。ふくよかさ、おおらかさがある。あっという間の終演、パーティーの終焉。こちとらいい感じで酔っぱらってきてて、かつ音楽でも上げられまくって終われねえ!って感じだったよ。もの凄い勢いで撤収が始まっている控え室でBAKUやサイプレス上野やTURTLE ISLANDドラムのタロウとかと、しつこく出会っては飲み、出会っては飲みを繰り返していた。でももういい加減に帰らなくてはならない空気で、帰ろうとしたら出口で、TURTLE ISLANDのヴォーカル、ヨシキとこの日最後の邂逅。最後の一杯を一緒に飲んで帰ってきた。

俺は基本的に、自分のライブの前の人等は観ない。それはそこがフジロックでも、LIQUIDROOMでもHEAVY SICK ZEROでも変わらない。何故なら理由は単純、自分のこれから超えなくてはならない、あの巨大なヤマ場で頭が一杯だから。とてもリラックスして人様の音楽に気をまかす気にはなれねえ。俺は同業者に褒められたくてやってるのでも、逆に褒めたくて行ってるのでも、ましてや、なあなあの親善試合しに来てるわけでもねえ。その日のお客のためだけにステージに立ってる。親愛なるオーディエンスのためだけに命を賭けてる。そして当然、彼等の心を、唯一俺等が奪ってやるつもりで挑んでる。音源では自分のやりたい事をやる。そしてその音源を支持してくれているお客がわざわざ足を運んでくれた場所、つまりライブではお客ために全力を振り絞る。
この心構えは、OKI DUB AINU BANDもTURTLE ISLANDも一緒だと思う。お情け無用。じゃねえとあの音は出ねえ。あの時間は任されねえ。ただやるか、やられるか。そしてやったか、やられたかはシンプルにお客の満足が決める。だから極端な話、自分の前の出演者が、良かろうが、悪かろうが全く関係ない。シンプルに俺は俺のやるべき事をやるだけ。皆がお客に向かってベストを尽くす。俺がいつも闘っているのはそう言う場所だ。しかも俺等は、ありがたい事に最近は大トリを務めさせてもらう事が多い。ってことは自分等のライブが終わると、もうパーティーは終わりに向かってるか、もっと凄い時は、控え室出たら電気がついててお客はもう帰っててスタッフが掃除してる始末。しょうがない。俺の楽しみのためにこのパーティーはあったんじゃない。当然、お客のためだ。これが自ら望んだ大トリの宿命だ。それがプロってもんだ。そう納得してその箱を後にする事が日々ある。OKI DUB AINU BANDも、TURTLE ISLANDも同じパーティーでブッキングされていたことはあったけれど、ちゃんと観れたのは初めてだった。理由はただ単に、それまでは俺等が後の出番だっただけ。それだけ。悪気はない。お互い様。だからこそ、昨日は良いタイミングで素晴らしい、ぶっ飛びまくってる彼等の音楽を心から楽しませてもらった。聴きながら、どっぷりと爆音にはめられながら、俺は俺等に足りないものは何か、それはどうすれば克服出来るのか、今日の悪かった点はどこか、独り静かに燃えていた。もう1度、偉大なるライバルに乾杯だ!

ふう。いいパーティーだった。参加出来たことに素直に感謝だ。また遊びてえ。あれだけのド遊び空間を築き、回していた全てのスタッフ!お疲れさん。最高でしたよ。まさに邂逅。色んな人に出会えた。NICE PARTY!!!

で、今は新千歳空港に着陸して、札幌に向かうJRの中。本来なら上記の昨日の夜の出来事だけでも、思い出したりしながら、充分旨い酒が飲めるんだけどさ、そうはいかねえ。あれは、あれ。確かに滅多にない貴重すぎる夜だったが、止まるわけにはいかない。次の週末が同じ速さでやって来る。TURTLE ISLANDも同じようにツアーが始まったらしく、機材まとめて次の街に向かって行った。後で笑うつもりなら今少しの我慢だ。やるべき事、修正すべき部分も幸運な事に、まだ、なんとまだある。あの灼熱のステージも、あの鍛錬がなかったら超えられてはいなかっただろう。怒濤のゴールデンウィークツアーに向けて練習だ!

皆も健康で。
ILL-B



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