MESSAGE FROM BOSS

2008.7.1(#2)
いい季節やね。札幌もかなり快適な事になっとるよ。梅雨もないし、カラッとしてて、涼しいし、こっから2、3ヶ月は北海道の気候が最高気持ちいいです。

突然だけど、ここ見てるヤツでスケボーやってるやつってどれ位いるかな?札幌は特に冬場がアレだから、スケーターってあんま周りにいないんだ。どっちかって言うとスノーボーダーの方が多いんじゃないかな。何でこんな事を書くかというとね、FESN、FAR EAST SKATE NETWORKっていうクルー知ってる?森田貴宏っていえば判るかな。そう俺等が六本木コアでやったライブを撮って、ライブビデオを編集してくれた男。そして「THAT'S THE WAY HOPE GOES」の監督ね。そんな彼はスケーターなんだ。ま、彼の事を知らない人に最初から説明するつもりで書いてるからね。で、彼は今まで色んなスケボーのビデオ、最近ならDVDを自らのFESNからリリースしてるんだ。俺はスケーターじゃないし、スケボーも全くの素人なんだけど、彼のスケーターを撮った作品は本当に好きなんだ。
難しい技とかなんてさっぱりわからん。ましてや出てる人も誰一人知らん。でも楽しめる。一見すると、ただボケっと眺めてると、延々とスケーターが滑ってて、技を披露しているようにしか見えないかも知れない。しかしそれだけではない事に俺は幸運にも気付けた。そこには、映像の向こうには、注意深く観ると透けてくる「何か」がある。スケーターにしか解らない話じゃなく、万人に理解されうるドラマが実は隠されている。そう、隠されているんだ。だからここで書いたからって
すぐ観たからって、俺と同じ感想を持つってワケじゃないぜ。音楽と同じ。受け手次第でいくらでも印象なんて変わるからね。俺自身だって、毎日同じ気分ではない。とにかく、俺は彼の最新作「OVERGROUND BROADCASTING」を観た。最高に楽しく、そして笑えて、勇気づけられた。これは俺自身に起こった事実。

スケーターの世界ってのは、ただの遊びに見えて、いや、ただの遊びだからこそなのかな?ここでは決めつけない。ラップ稼業なんかと比べると、とても純粋だ。
グラフィティの世界にも同じモノを俺は見出す。理由は、ビジネスになりにくいから。すべての芸術には、2種類の形態がある。それは売るつもりで創られたモノと、売るつもりで創られたワケではないモノ。どっちが良い悪いって話じゃないぜ。ただスケーターの世界にはビジネスの匂いがしてこない。これはスケーターの世界の外側にいる俺から見た景色だからね。全てを知っているわけではないよ。ラップ稼業とは根本は同じでも、やはり異なるものに見えるんだ。もちろん仕事にしている人もいる事はいるだろう。けれど、そもそもスケーターって呼び名は職業なのか?多分違うと思う。単なる趣味なのか?それも違うと思う。簡単に言えば生き方なんだと思う。だからいつまでも皆、マジで少年の様に楽しんでいる。皆、恐らく仕事をしてるはずだ。ボンボンでもない限り。そしてそれとは別の位置にスケートを置いているように俺には見える。汚れのない場所に。大切に。そう、いつまでも楽しみたいが故に。もちろんラッパーだって純粋だ。しかしこれで喰っていくと決めたなら、いつまでも無垢なままではいられねえ。危ねえ橋だって渡んなきゃならねえし、楽しい事ばかりってわけでもねえ。もちろん俺は他の誰よりも楽しんでるぜ。しかしはっきり言って、毒すら飲み込んでやる姿勢じゃねえと金は稼げねえ。半端な仕事で、はした金は稼げても、それも長くは続かねえ。何かを犠牲にしなくちゃならねえ。まあ、これは世の中全ての仕事にあてはまるな。そしてもし君がずっと、あの最初の気持ちのまま、楽しみを全てに勝る第一条件にしながらラッパーを続けていきたいのなら、多くのスケーターがスケートに接するようにすればいい。そして君は初めて気付くだろう。楽しむという事はいかに多くの犠牲の上に成り立っているか、を。彼等の生き方は俺には真似できねえ。俺はもう戻れねえ場所にいる。だからなのか知らないけれど、俺はスケーターの世界が好きだ。部外者だけれど、いや部外者だからこそ憧れにも
似た気持ちで眺めている。そしてその視点から見た彼等の世界は、すぐに、ただの遊びに見えて、実はただの遊びではない事を俺に気付かせる。熱さを内に秘めた、寡黙なスケーター達。究極の快楽、刹那の絶頂のために、それをもう一度だけ味わいたいがために、無情な、モノ言わぬコンクリートに体ごとぶつかっては砕けを、何度も何度も繰り返している。区画整理を命ぜられたありとあらゆる遮蔽物、建造物を、すなわち社会のシステムそのものを、過保護なクソッタレな世間様を、彼等は余裕でひとっ飛びに飛ぶ。鋭角に足場を築き、アスファルトに一矢報い、彼等は文字通りその「上を行く」。瞬間の征服者。まさに路地裏で、限りない自由を手にしている。重力に逆らい、跳ね、空に近づき、そしてすぐに落ちてくる。わずか1秒にも満たない涅槃の境地。それの味を知ってしまった愛すべき雑踏の無政府主義者達。音楽を口ずさみ、友情を信じ、外側の世界に出る事を恐れず、遠くからの客人を迎え入れ、それに学び、自分を世界の一部と自覚しながらも、地元を愛している。ごきげんな、人生のひと時。失敗の影、疲れ、諦めを振り切り、究極の快楽、刹那の絶頂のために、もう一度だけ味わいたいがために、再び助走を始める。そう、彼等の動作の1つ1つは「詩」だ。
森ちゃん、マジで良かったぜ。俺は友人としてだけではなく、一人のファンとして、君に「何か」を教わった一人の人間として、日本人として、このマスターピースが、
多くの人間に観られる事を、そして前向きな作用をもたらす事を祈っている。信じている。そして今日も、昨日に引き続き、楽しんでる全てのスケーター達に栄光あれ!




戻る

トップ

(C)TBHR