MESSAGE FROM BOSS

2009.3.2(#3)
今は札幌、出来上がった作品を観ながら、魅入ったり、笑ったり、思い出したり、感謝したり......。この作品はさ、もうね、これはあの秋、ツアーの時からよく森ちゃんとも話していたんだけどさ、主演はTHA BLUE HERBともう片方いるんだよ。2つで1つなんだ。そのもう片方とは、そう、決まってる。オーディエンスなんだ。そして、そこに、底にいたTHA BLUE HERBとオーディエンスの、ちょうど間にあった、「共感」ってやつが大きな主題になっている。俺はそのツアーの当事者の1人だし、映像も監督の次に観てるけど、マジでそうとしか言いようがない。はっきり言って最先端の音楽やってるわけじゃない。流行の類いでもない。解りやすい、ナンパついでに聴けるような音楽でもない。ここで言う「共感」とは、もう今の世の中だったら、存在すらも珍しがられるようなものだ。その透明な「共感」が実在するってことすら疑われてるかもしれない。冷笑的で、皮肉っぽく、便利なもの、早いもの、簡単なものだけを追い求めてる人から見れば、バカバカしいほど面倒くさい代物かもしれない。だがまだこの国は腐り切っちゃいねえ。俺は実際にそれを目撃してきた。それも日本中で。数こそ多くはないが、そのTHA BLUE HERBの音楽から得る「共感」を求めて、人々が、そこに、底に来るんだ。いつの間にかそうなっていた。そういう人が多く集まるようになっていった。魂と魂の会話だ。そして俺等も次第にそれを求めるようになっていった。俺等が1番ヤバいって事を教え込んでやるためだけに音楽を鳴らしていた俺等が、いつの間にかそうなっていた。「共感」以外に求めるものはない。今、そう言える。男も女も、老いも若きも、独りも、恋人達も、友達も、ヒップホップが好きな人もそれ以外の人も、その日仕事だった人も仕事してない人も、諸々の............な人もそうじゃない人も、とにかくみーんなそれを「共感」を求めてそこに、底に、わざわざ大切な時間を割いて、大切な金を支払って来てる。しかも、だ。ただ来たからって1曲目から安易に手に入るものじゃない。それはひどく残念なことだが手に入らない時すらある。そういうモノだ。大切にゆっくり育て、見守り、許容し、求め、そして想いを貯めて、貯めて、貯めたその先に、歓喜にも似たあの瞬間がある。それが、ちゃんと映ってた。送り手と受け手が、共に、同じ感覚を共有し、互い喜んでいる画が映っていた。

もうここまでさ、THA BLUE HERBの看板を背負って12年経ったけどさ、数えきれないくらいライブやってきたけどさ、ほんっとにね、色々あったけどね、もちろん俺等の行動の全てが正しかったとは言わないしさ、事実多くの誤りも引き連れてるし、多くの分かれ道に立ち、多くの人達と別れてきたしね、何せ賛否両論のど真ん中を走って来たからね、そりゃあ誤解もされたし、無数に馬鹿にもされたけれども、憎まれもしたけれども、常に寂しさを傍らに抱いてきた旅だったけれども、けれどもだ!けれどもこれだけははっきり言える。あの映像に映っている全ては真実だ。映像は嘘をつかない。嘘すら隠せない。森田貴宏のカメラには小細工は通用しねえ。それはどうとでも解釈できる曖昧なイメージなんかじゃない。はっきりしてる。一目瞭然、あれが俺等そのもの。あれが俺等と、俺等が信じているオーディエンスだ。
あれが俺等が過ごしてきた栄光の過去であり、俺等が信じてる輝ける未来だ。それが好きか、嫌いか、思った通りか、そうじゃなかったか、らしいか、らしくないか、正しいか、間違ってるか、変わったか、変わっていないか、とかじゃなくて、あれが俺等、ありのままの俺等。

ま、楽しんで欲しい、シンプルにそう思います。監督もそう思っているはずだ。何せ、俺等自身が楽しんでいる。皆、楽しんでください。



健康で。
ILL-B



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