MESSAGE FROM BOSS
2009.6.1(#3)
そして2日後、俺等は雨の横浜にいた。さあ始まりだ。一歩一歩進んでいくのみ。行こう。着いた日はオフ。先に着いてたダイと、STERUSSチームと合流。で、中華喰って、飲む。彼等はまっじでHIP HOPが好きでね、俺等もめっちゃ好きだから、話ががっつり弾む。旅の話も交えつつ、でも結局はHIP HOPの話になってる。
ちょっと昔だとこういう風に同業者と飲むなんてのは考えられないことだった。これも変化した部分だな。最高楽しい夜だった。STERUSS!ご馳走さんでした。
翌日、舞台は1年ぶりの横浜LIZARD。次の大きな大きな周回の1日目。対バンはTURTLE ISLAND。もしもこの名前を知らない人がいるのなら、その人は幸運だ。
まだ超ド級の楽しみが残っているのだから。出番は俺等が最初。あのエネルギーを外側に放出しまくりながら進んでいく巨大船団を「動」とするなら、我々はまさに「静」。俺は自分の領分をわきまえている。どの道、最後は彼等が、俺を含めた全員を約束の場所まで連れて行ってくれるはずだ。ならばまずはお客の心に、内側に俺等の持ち込んだ言葉とその意味をしっかりと焼き付けるのだ。オーディエンスの皆も俺と同じ思いだったのかは分からないが、その日はその通りに進んでいった。
一曲ずつをじっくりと噛み締めるように、静かに、しかし熱さを湛えた目で見つめているオーディエンス。一言ずつ心込めてラップさせてもらいました。ありがとうございました。そして登場、TURTLE ISLAND。1年ぶりに観た彼等。デカくなってたねえ。精霊の域だ。完全に突き抜けてる。がっつり飲んで、踊って、歌ってってやってるうちに、あの所狭しと神の子と楽器がひしめいているステージ上では一体どんな音が聴こえてるんだろうって考えててさ、気付いたら上がってました。
DACHAMBOが札幌来た時もそうだったんだけど、そこには、頂には、ウェルカムなヴァイブスが満ちていて、思ったこと、つまり「ほんっとうにこいつ等半端ねえな」って酔っ払って歌ってました。終演後もタートルチームとサ上、根木君とかと結局それから6時間飲んで、語って、で最高楽しかった!
1回札幌に戻り、再び準備する。次なる舞台は野外フェス、埼玉、所沢でとぶ音楽祭。日中、しかも初めての場所なんで1度セットを組み直す。俺等、この12年の間に知ったことの1つ。HIP HOPの世界を飛び越えて外に出てみると、そこにはたくさんの強者が同じようにちゃんといて、しかもそこにいる人々はHIP HOPという音楽を知ってるようで実はほとんど知らない。HIP HOPの世界で、誰が1番かとか(この欲求の効果は否定はしない。良く作用する場合も多い。)、誰が誰に口喧嘩をふっかけたとかに限られた時間を費やしてばかりいるとこの事実を忘れがちになる。HIP HOPの外の世界にいるオーディエンスも全っ然同じ。言葉が通じる人がたくさんいる。
そして彼等、彼女等も言葉の力を信じているんだ。それはいろんな異種音楽格闘技戦や数々のフェスで確信してきた。だからそういうフィールドに出て行って如何にメッセージを残すことが出来るか、これはあらかじめ広さを限定されたHIP HOPの世界にいる俺等にとってはある意味、生存の問題なのだ。小さなパイを互い奪い合って、互い消耗していくよりも、俺等は外の世界に無限にいる人々にも声を届けることを選んで走ってきた。事実そこにいる音楽家から受けるインスピレーションも半端ない。
これは先月のZAZENやEGO、そして上記のTURTLEにも言える。この日は快晴。早朝に札幌を出て電車乗り継いで所沢へ。35分1本勝負。一気に走り抜けた。隠すものが何もない、あのどこまでも晴れ渡った空と木々の下、しっかりやらせてもらいました。ありがとうございました。
そして大阪、久々だったな。8ヶ月ぶりか。インフルエンザで結構心配だったんだけど、着いてみると意外と皆、マスクもしてなかった。実際にその場に行ってみないと分からんことはあるね。前売りは完売。リハ後、これから2日間一緒に回るケンセイさんと合流して、まずは鶴橋へ。そうオモニ。あ〜い変わらず極上のお好み焼き喰って、一旦ホテルで休み、いざ本番。着くとケンセイさんがスピン中。色々聴いたことのない音楽を鳴らしていた。良い感じに暖まってる。で、俺等。いつからか、もう何度目か数えるのをやめてしまった位、ここ大阪でも忘れられない夜を重ねてきた。はっきり言って信頼してる。大阪のオーディエンスを。やるべき事をやれば結果はついてくる。
初めてベイサイドジェニーでライブをやってから東京と同じく今年で10年。ここでも色々あった。良いことばかり、喜びばかりがあったわけではない。涙なくしては乗り越えられない別れもあった。だからこそこの夜も「MAINTAIN」のリリックスが響く。その夜、そこで、同じく底で語られていたのは、もはやスタイルがどうとかいう次元じゃない。俺等の、つまり俺とダイと、大阪の友人達の間で起こったことから得た真実だ。また1つ、皆で階段を登ることが出来た。一見あれはただの週末、よくあるパーティーの1つだ。でもね、しっかりと積み重なってるよ。間違いない。あの夜に意味があったかどうかは次の夜に分かる。また遊びましょう。ありがとうございました。
終わってからは上がりすぎて完っ全に飲みすぎた。関西の友人達大集合だったし、絶好調で遊んでました。
翌日、再びケンセイさんとTBHの1個小隊に戻り、ジンの運転で一路徳島へ。秋のツアーでも通った道、渡った橋。徳島到着後、軽くうどん喰って、リハ。去年の3月以来のDOUBLE-OO。三木君とも久々の対面。徳島の音楽家が緊張感と共に迎えてくれた。前日のライブハウスのような音響と一転、ここはクラブなんで、ケンセイさんとダイは音作り、結構大変そうだったな。リハ後、飯。徳島産の旨い魚をすだち付きでたっぷりいただく。で、本番。この日のケンセイさんのプレイは前日とは違い、攻め攻め。
皆、それぞれバラバラなオーディエンスの心を1つにするという意識が選曲や音圧から楽屋の俺等にまでがっちり伝わってくる。プロ中のプロ。で、俺等。前日のような超満員ではなかったこういう日、ケンセイさんのやり方にも通じるけど、先に上げてもらうことを期待しない。とにかく俺等の気持ちを前面に押し出して、オーディエンスの心に火を灯すしかない。この目の前を流れていく時間が、特別な時間なんだと信じてもらわなくてはならない。俺の言葉を信じてもらうには、まずその言葉の送り手の俺が、その言葉を信じていなくてはならない。これがラッパーのライブだ。ブログやエッセイ、カゲ口とは違う。その夜の間に決着を付けなくてはならない。だから熱く、どこまでも熱く。
皆の目も熱を帯びてくるのが伝わってくる。夢中の向こう側にその日の出口が見えてくる。あの感謝の瞬間だ。心からそう思っている自分に気付く。最後まで聴いていてくれてありがとうございました。終わってからは、呼んでくれた社長さんとかと大酒飲んで、大いに笑った。
で、今月最後の仕事はレコーディングでした。相手はDJ BAKU。彼の、日本人MCを集めたアルバム「12 JAPS」に収録される1曲を吹き込みに行ってきた。BAKUに初めて会ったのは1999年冬。東京でハッパーズのライブをやった後(DYEのデビュー戦やね)、打ち上げ後に迷い込んだクラブで回してた。その日は軽い挨拶だけだったけど、その後、翌年の青山CAYであったDRY&HEAVYのリリースパーティーでがっつりリンクした記憶があるな。森ちゃんとも繋がってたのもあって、あれから多くの現場で顔を合わせてきた。この10年、色んなスタイルが入り交じるこの世界を、DJ BAKUも生き残った。前々からいつか一緒に曲を創ろうぜといっつも言っていたから、光栄だった。
がっつりやらせてもらった。HIP HOP100%な曲になった。俺等はまだ諦めちゃいねえ。なあBAKU、誘ってくれてありがとうな!
6月はライブは大分、1発。上がろう。
健康で。
ILL-B
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