MESSAGE FROM BOSS

2009.12.1(#2)

9月頭から11月中頃までの2ヶ月半、久々にニューヨークにアパート借りて住んでました。全員が「個性的」という言葉で括れるくらいパワフルな人々に紛れて生きてました。22歳くらいに初めて行って以来、かれこれもう6回目。最近はマスタリングとか仕事で行くことが続いてたけど、今回はみっちり地に、アスファルトに足を着けて、360度から常に沸き上がっているインスピレーションを五感見開いて吸収してきました。あの頃、初めて行った時は俺はまだMCじゃなかった。路上ではMAD LIONの「TAKE IT EASY」やCRAIG MACKの「FLAVA IN YA EAR」が1日中かかりまくってた。今回は、着いたばっかりの頃はRAEKWON、そして後はずっとJAY-Zが街を歩くと聴こえてきてた。テキ屋の持ってる小さなラジオや、その横を爆音で通り過ぎるレクサスから。ワールドシリーズでのJAY-Zのライブにも驚いた(無論、松井も半端なかったね)。帰ってきてから読んだ「EMPIRE STATE OF MIND」のリリックのリアルさにも後になってトバされた。ヒップホップは15年前に行った時より、あり得ないくらいデカくなってた。まるで後戻りできずに転がり落ちる石のように。あまりに巨大で、日本から来た、今さら格好に憧れているわけではない俺にはファンタジーの世界だった。BBQやハーレムの俺の世代の人達はどう感じているのだろう?

でもダンスフロアーは、そう、アンダーグラウンドなダンスフロアーは相変わらず、何も変わらず、滅っ茶苦茶リアルだった。小さな、入口に誰も並んでいない、エントランス料金もタダなクラブでも、この世の果てのおとぎの国のようなサウスブロンクスのロフトでも、曜日問わず人種問わず新旧問わずに、音楽を心から愛し、理解し、その日のDJと言葉を介さない会話がテレパシーでできるダンサーが大勢いた。そこでは、叫び声と歌声と話し声が、音楽と自然に調和していて、
シンプルで普遍的なメッセージに溢れていた。それがちゃんと俺にも聴き取れた。マジで札幌のいつも行くパーティーと全っ然変わらなかった!取り囲んでいるサーカスの登場人物のようなダンサー達のぶっ飛びぶりは、目を奪われるくらい凄すぎて、そこはダントツで日本とは違ったけれど、俺の心の中の問題、つまり俺がその場にいて感じるメッセージは同じだった。YAKKOさんと同じ!そしてそのメッセージを受け止め、今度は俺から発するメッセージも同じ。で、それを
受け止める隣人のリアクションも同じ。同じすぎて笑えるくらい同じ。そういう感覚になったのは今回のニューヨークが初めてだったかもしれない。万人の憧れに常に輝いているニューヨーク。人も、モノも無限にひしめいていると思っていたニューヨーク。いつも何かを与えてくれる対象としてのみ見ていたニューヨーク。
でも2ヶ月後くらいに気付いた。ダンスフロアーで会う人の顔ぶれはそんなに変わらない。ここは小さな世界なんだ。アンダーグラウンドなダンスミュージックのコミュニティは、つまり、世間は小さな世界だった。皆の名前も顔もすぐに憶えれるくらい。皆、さりげなく挨拶して入ってきて、段々人が増えていって、帰る人もさりげなく挨拶して出て行って、結局いつもの顔ぶれになって最後の1曲を見送る。そして電気が付いて、皆、挨拶して別れる。普通の、よくある世界。
どこのダンスフロアーに行っても、居場所なんて自分が創ろうとすればちゃんとあった。いつ行っても、このパーティーが特別なんだと思えば自然とそうなった。
今思えば、大きな懐の中で遊ばせてもらっていたんだと思う。進んでも進んでも辿り着く事のない地下社会の奥のそのまた奥で。皆、いい顔してたな。

ただ与えてくれるのを待っていては夜は終わってしまう。時間は短い。すぐに旅は、人生は終わってしまう。皆待っているんだ。アクションを。リアクションを。
それぞれが作用しあってこの世界は形成されているんだ。俺も、君も、それぞれが1つずつの要素で、自ら自らを1歩前に出して作用させれば、世界は変化する。

本当に沢山の人にお世話になりました。皆のおかげで本当に有意義な時間を過ごすことができました。ありがとうございました。また会う日までそのまま元気で!

PCサイトのEARTH PHOTOのコーナーに写真あります。



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