MESSAGE FROM BOSS

2010.3.2(#3)
こっからはO−WEST後に戻ります。翌日はオフ。ったく遊びすぎたぜ。でも速攻起きて、二日酔いの中をホテル移動して、ダイと合流してスタジオ入って翌日のライブの練習。1月、広島から続いてた2010年ライブセットの試行錯誤の旅の1つのゴールが目前に迫ってきていた。
場所は東京のホーム、リキッドルーム。対バンはご存知TURTLE ISLAND、そしてLAUGHIN’ NOSE!!!

俺にとってLAUGHIN’ NOSEっていうバンドはもの凄く特別な存在なんだ。俺の世代ではLAUGHIN’がルーツだって人は多いと思う。ブルーハーツの前の時代やね。俺はまだ中学生の頃にその名を知って、がっつりはまって、ジャンルでいうとパンクなんだけど、何ていうか全然悲惨じゃないっていうか、世の中をすねてないっていうか、良い意味でポップな音で、しかも凄くスタイリッシュで、とにかくカッコ良かった!函館の外れの畑に囲まれた小さな町に住んでた俺には、ある意味ニューウェーブ。果てしなく遠い場所でキラッキラ輝く、まだ見ぬ世界の広さと深さをも想像させてくれる希望の星のようなバンドだった。中学の友達がやってたLAUGHIN’のコピーバンドの練習に遊びに行っては、横で口ずさみながらいつもワクワクしてた。ラジカセやコンポから鳴る音楽じゃなくて爆音で聴く音楽の最初がLAUGHIN’だったんだ。で、俺は高校に行って、当時バンドブームのまっただ中、自分でもLAUGHIN’のコピーバンドを組んで、
函館のライブハウスで300円のチケット売ってライブやったりしてた。持ち場は当然ヴォーカル。気分はチャーミー。音楽の深さなんて何にも知らず、気付かず、ただただ楽しい青春をLAUGHIN’の音と(SIONとも)過ごした。そんな函館の10代後半。

で、高校出て、俺は札幌行って、水商売のバイト始めて、夜遊び知って、HIPHOPを知ることになる。それが大体20歳位かな。で、O.N.Oに出会い、ずーっとHIPHOPを聴き続け、創り始め、探し続け、いつしか仕事になった。で、今はそれで喰ってるってわけ。

HIPHOPにがっつりはまってる頃、まだラップはやってなかったけど、もうBOSSと呼ばれていた頃、まだ22,3歳だったと思うけど、ある夜、いつものように週末は必ず行ってた当時の札幌の荒くれどもがわんさか集まってたAL’S BARって名のクラブにWACHA−LLと
遊びに行ったんだ。「あの夜だけが」の1番で歌われてる店だね。ドアを開けると歌詞と同じように既に中は、はるか彼方までお客でごった返してる。
沢山の友達と握手やハイタッチしたりしながら店の奥に差し掛かった時にWACHA−LLが言ったんだ。「あれチャーミーとポンじゃね?」チャーミーって人はLAUGHIN’ NOSEの顔、ヴォーカル。で、ポンって人はLAUGHIN’ NOSEの不動のベーシストなんだ。
言われ、見つけ、気付くと俺はもう話しかけに行ってた。名前を恐れ多くもボスと名乗り、昔、がっつりあなた達の音楽にやられたこととかを必死でしゃべってた。2人とも穏やかに聞いてくれてた。で、聞けば翌日ライブだと言う。金のない俺はゲストで入れてくれと頼み込んだ。彼等は
余裕でうなずいてくれた。で、俺はずうずうしくもこう頼み込んだんだ。LAUGHIN’のクラシックの1つに「I CAN’T TRUST A WOMAN」って曲があって、ファンなら誰でも知ってる曲で、超カッコイイんだけど、その曲ってのはベースのブレイクが曲の中に(たしか)
2回あるんだ。で、俺は、その2回目のベースのブレイクの時にステージに上げてくれ、と頼み込んだ。で、ブレイク後、一気にビートが畳み掛けてくるタイミングでダイブするから、と。するとポンさんは笑って「ええよ。」と言ってくれたんだ。

翌日、俺はWACHA−LLと一緒にベッシーホールっていうライブハウスにいた。パンクスがモッシュしまくってる中、B−BOYは俺等2人だけ。で、その時はやって来た。「I CAN’T TRUST A WOMAN」だ!1回目のブレイクは当然スルー、で、2回目。ビートの濁流が一瞬止まる。そしてポンさんは叫んだ。「ボス!上がってこいや」。俺はステージに上がり、ポンさんが必殺のブレイクかまして、俺ダイブ!そっから先はよく憶えてねえ。って言うかそのブレイクの辺りの記憶しかない。かれこれ14、5年前の話だ。

で、やって来た。2010年2月7日、リキッドルーム。あの夜、ススキノのチンピラだった俺は今、ラッパーになって、中学生からのアイドルLAUGHIN’ NOSEと同じステージにブッキングされていた。前の日とか、リキッド行ってスタッフがLAUGHIN’のCDをかけて
ても、全部歌えてる自分に驚いていた。そして当日、俺等の隣の楽屋には「LAUGHIN’ NOSE」の文字が。まじでここにいるの?
俺は意を決して中へ入っていった。中には4人の男達が。チャーミーさんも!ポンさんもいた!うわあスゲエとか俺は思っていた。あの夜以来、そして中学生以来の道のりの1つの到達点にすら思えた。自分が何者かを伝えた後、あの14、5年前のベッシーホールでのライブのことを伝えると、皆、笑ってくれた。で、「今日はよろしくです」と言って楽屋を去ろうとした時、それこそドアノブに手をかけた瞬間、背後からメチャクチャ大きな声が聞こえた。「ボス!」「はい?」振り返った俺にポンさんは言ったんだ。「今日も飛べや!!」「はい!」

ライブは俺等が1番手。地下鉄のSEの後、幕が左右に開く。オーディエンスとの対面。帰ってきたぜ。やはりいつものリキッドとは若干空気が違ってたな。パンクスが沢山来るであろうことは俺等も予想はしてたから、今回は硬派なセットだ。一歩も引かない50分一本勝負だった。
この日にかける思いを全て言い終わり、例によって礼を尽くし、輝けるエンディング。皆、最後まで聴いていてくれてありがとうございました。
そしてやって来たTURTLE ISLAND。観るのは去年のバスク、ボンベルニア共和国以来。相変わらず究極。ステージ狭しとメンバーがいるんだけど、1人1人、血管の先までバンドの意志が通っているのが観ていてよく分かる。陳腐な言い方かもしれないが、マジで気持ちが
1つになってる。あれだけの人数、楽器の数と種類が混在している中で、気持ちを1つにするってのはシンクロする最低条件なのかもな。
本当に凄い。ありえない位、先に行ってると同時に不思議なデジャブ感もある。DNA単位で俺等、日本人に埋め込まれてる特別な何かに訴えてくるグルーヴなんだよなあ。でも同時にバスクのような日本以外でも受け入れられる可能性を持っていることは、実際にこの目と耳で、俺は見届けてきた。何なんだろ、あれは。皆、世界中の人間がそこにやられて、そこで効いてる。TURTLE ISLAND、恐るべし。

TURTLE ISLANDが終わって、楽屋で皆とお疲れを分け合って、LAUGHIN’ NOSEのT−シャツに着替えて、酒を飲んでると、あの音が、LAUGHIN’のライブでずーっと鳴らされているあのイントロが聴こえてきた!やべっ、マジで来たっしょ!俺は愛樹と一緒に
ステージ袖に走っていった。まるで中学生のように、無邪気に飛び跳ねながら。俺等のアイドルに会いに行くんだ!って。そしてステージ袖に着くと・・・。「PARADISE」が響いていた。もう何百回聴いたか分からない曲。舞台のLAUGHIN’ NOSEは若かった。マジで
何にも変わってなかった。愛樹と話したのを憶えてる。「何も変わってねえ。」「でも変わったことはある。俺等が知り合って、一緒に前座をやって、こうして一緒に聴いているってことはあの頃にはなかった。」って。間違いない。時間は経っていたんだ。とてつもなく長い時間が。
北の1人の男がHIPHOPを知って、マイク持って、レコード作って、ライブしてっていう、比べれば短い時間がすっぽり入る位の長さだ。
その間もLAUGHIN’ NOSEはLAUGHIN’ NOSEそのものをずーっとキープしていたんだ。そしてやってきた、あの曲。
チャーミーがハーモニカ持った時点で、俺は「来る。」と確信していた。「I CAN’T TRUST A WOMAN」。昔よりも気のせいかピッチが上がったかと思わせるグルーヴ。そして2回目のブレイク。ポンさんが叫んだ。「ボス!来いや!!」俺はステージに上がっていた。
マジでタイムスリップ。14、5年前のベッシーホールと同じ曲、同じ場所、同じタイミングでダイブ!ほんっと長い間音楽を聴き続けてきたご褒美を与えられた気分だった。その後もう1回LAUGHIN’ ROLLのブレイク「何メンチ切ってんねんお前〜」でも愛樹と一緒に
ステージ上がって再びダイブ。この模様はツアーレポートの最後の動画に映ってます。いやーしかしこんなことって起こるんだな。最高の時間だった。ありがたい。音楽の神様、ありがとうございました。リキッドルーム、ありがとうございました。そしてLAUGHIN’ NOSE!
あの日、皆さんの魂を燃やしてのライブに、立ち振る舞いに、後姿に、マジで多くを学びました。続けることの難しさと気高さを少しですが知った様な気がします。俺は本当にファンなんで、あの夜も、うまく話すことが出来なかったっす。すみません。僕等も頑張ります。皆さんの高みに少しでも近づけるよう、精進します。本当に楽しかったっす。ありがとうございました。


で、今は、ニューヨークで2週間過ごし、成田着陸、渋谷到着。明日はDJ KRUSHの20周年。そこで2曲キックするためにここにいる。

3月のライブは仙台のみ。去年のアラバキ以来。楽しもう。

健康で。

ILL−B



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