INTERVIEW
BY YUKO ASANUMA

ILL-BOSSTINO
#1[第3幕の始まり]


第三幕の始まりと心境の変化

● 第三幕についていつから、どこから考え始めましたか?

2005年に入って、もうDVDを編集してる段階から、(リリックは)書いてた。でも、はっきり言ってその時点では書くことなかったのよ。書き尽くしてたっていうか。俺の場合ヴァースも長いしさ、1MCだしさ、客演頼まんしね、やっぱり普通のMCとは字数が違うからね、毎回「書き尽くす」ってとこまで行っちゃうんだ。セカンド(『Sell Our Soul』)のときもそうだったんだけど。だから書いててもね、結局時間が経たないと書くことがなかった。だから逆に時間が経てば書いてるんだろうな、とは思ってた。まず最初にゆっくり色んな事を考える時間が必要だったんだ。

● では、本格的に書き始めたのは?

DVDの制作期間は2005年の1月からだったけど、まだ前の、「PHASE 2」のフィーリングだった。DVDの編集やりながら見ててもさ、そこに映ってるのは今までからその時点までなわけで。むしろ過去の清算っていうかさ。DVDで、8年分の過去の清算をかっちり終わらせてから、っていう風に思ってたから。DVDの制作って半年くらいかかったんだ。だから、DVD終わってからの1年半くらいが、俺にとっては3幕目までの過程だったわけだけど、いつの間にそう(書けるように)なっていたのか、正直その境目は分かんないんだ。でも、アルバム1枚ごとに俺ら的にはコンセプトがあって、後付けなんだけどさ。自分たちが設定したコンセプトじゃなくて、状況的なコンセプトっていうかね。ファーストはさ、何にもなかったわけじゃん。どこまで上に行けるかってことだけでさ。セカンドはそれなりに認知はされていたんだけど、それを崩したいっていうか、もうちょっと深い所まで行きたいっていうのがあって。で、3枚目のアルバムになったら、俺は何を歌うべきなんだろうってずっと考えてたんだけど…… 俺、その間に結婚したしさ、正直きっとそういうこともあったんだと思うよ。それも要素の1つとして、そこからの毎日の積み重ねが俺を新しい思想に導いて行ったんだ。Calmさんと曲作ったのもあったし。「人生は噛み付くだけじゃない」っていうかさ、そういうようなことを段々思うようになってきた。暴力的なものではなくて、もっと普遍的なものっていうか。「そういうことを歌うべきなんじゃないか?」って、DVDが終わった時に思ったんだよね。自分たちを見に来てくれてる人たちと過ごした濃密な時間の、あの映像を見ちゃうとさ。「あの人たちと俺らは次どこへ行くか?」ってことを考えて、もう、やっぱり、いよいよ開かれて行くんだろうなって思ったんだよ、俺は。心がね。今まで聴いてない人も、ヒップホップ知らない人も…… 今までは、ヒップホップ知ってる人達の中でも、分かってくれる人だけが分かってくれればいいと思ってたけど、もういい加減、それも無くなったっていうか。逆に、殻が落ちてったっていうか。自然になっていった。

● そういう時間の経過を経て、少しずつ心境が変わっていったということですね?

そうだね。心境っていうもんはさ、少しずつ変化していくもんなんだよ。こうじゃないか?いやこうなんじゃないか?って繰り返して、いつの間にか、自然に気持ちがその時点でまだ見ぬ第3幕に向いていったんだけど、境目がどこだったのかは分からない…… DVD出してから1年半、どこかできっとスイッチが入ってたんだろうけど、気づいたら自然とそっちの方に向かっていってたよ。この自然とって言うのが象徴してる。無理がないんだ。ONOちゃんと喋ってても、ヒップホップ分かる奴だけが分かる音楽とか…… そういう音楽は、今まで散々やってきたし、それらは作品として残ってるしさ、ライブでもずっとやっていこうと思ってるしさ、だから今度はそれとは違う新しいタイプの音楽を作ろうって、それとは別の次元の何か新しい領域に入ろうって思ったんだよね。




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