INTERVIEW
BY YUKO ASANUMA

ILL-BOSSTINO
#2[制作過程 Pt.1]


● O.N.O.さんとは、どうやって作品の方向性を固めていったんですか?

2枚目のアルバムからの時間の流れの中でさ、ヒップホップのパーティーとかはもうあんま行かねえし、今ヒップホップがどうなってるかとか、全く知らない。前は、ちょっとは摩擦を起こすことによって(シーンに)コミットしていた部分はあったんだけどね、今はそれもないから、全然。でも、俺達の考えるヒップホップっていうのはちゃんとあってさ、やっぱり続けたいし、続けなくてはいけない。そのためには何か新しいものを作らないとダメなんだ。暴力とか高級車じゃない何かをね。そうなってくると、今の生活とか、大切な人とか大切な友達とか、人と人の間で起こる事、そういうことをもっと大事に歌っていくっていうか…… そういう話はしてた。

● DVD作りながら、O.N.O.さんの作った曲を聴いてみたりもしてたんですか?

聴いてたね。もう出来てきてたよ、それでDVDが出てから、俺が一人でカトマンズに旅に行って、本当はそこでアルバムのリリックは終わらせるはずだったんだよ。でもJ.S.S.もあったからさ、半分はその作業もあったから。J.S.S.はJ.S.S.で、俺、命賭けてたから、先にそっちを終わらせるってことになった以上、Tha Blue Herbはまだ本気になってなくて。半分くらいはもう録ってたんだけど…… 「PHASE 3」はもう去年、いや一昨年の段階で既に録ってたんだけど、J.S.S.終わってからもう一回旅行って、アルバムの残り半分を書いて、帰ってきてからまた録ったって感じだった。

● やっぱりファースト・アルバムでセンセーショナルな認知のされ方をすると、セカンド、サードを作るのってすごく難しいと思うんですけど、その大変さとか怖さとかってありましたか?

うん、難しい。だけど、全然怖かないよ。俺個人で言えばTha Blue Herbは3枚目だけど、Herbest Moonで2枚作ってて、J.S.S.もやってるから、トータルで見ると俺にとっては6枚目のアルバムなんだよね。で、昔はHerbest Moonは(Tha Blue Herbとは)違うものとして作ってたんだけど、J.S.S.辺りからね…… 一緒なのよ。結局、言いたいことなんて大して変わらないのさ。柔らかい表現を使うか、タフな表現を使うかっていう違いは、バックトラックとの調和を持たせるための違いであって、俺の言いたいことってのは変わらないんだよね。そういう風になってくると、もう次のアルバムに対する怖さってのは無くなったね。いいものを作らないと終われない、ってのはあったけど。いいものを作るまで終わらないわけだから、作り終わったってことは、俺はもう「超えた」のさ。そこまで作るしかないから。だから怖さはないね。うん、全然余裕。だけど今は、3枚目作り終わって、じゃあ4枚目作れんのかって言われると、それは分かんねえ。今日もずっとリリック読んでたけど、あれほどパーフェクトな言葉の並びは…… またやれるのかって言われると分かんねえけど、また3年くらい生きれば言いたいことも増えるしさ、きっと書けると思うよ。

● 今回もそうだったわけですよね?

今回もそうだった。セカンド作るときもね、確かにファースト聴いちゃうと「あれを超えるものが作れんのか」っていう(心配)のは一瞬よぎるけど、作り始めると夢中になってるね。楽しくて。そういう怖さはあんまり感じたことない。「多分作れると思う」って思ってる。

● 確かに、言われてみると今回のアルバムって、今までのTha Blue Herb、Herbest Moon、J.S.S.にあったものが統合されているような感じがしますね!集大成っていうか。

統合されていってる。でも、常にね、俺はそのつもりでやってるよ。その時その時で思う事ってのはそれまでの経験も大きく影響してっからね。Tha Blue Herbのセカンドのときも、Herbest Moonも、J.S.S.もそうだったし。その流れがあっての集大成、ってところはあった。J.S.S.は言葉の数が少ない中での表現だったけど、今回は「全て」を言葉に表したね。うん、集大成になってる。

● 音楽的な部分に関してはどうですか?もちろんトラックはO.N.O.さんが作ってるわけですけど、「こういうものにしたい」っていう話はしたわけですよね?

うん、喋った曲もある。でも良い音楽を作るっていう理想が俺等を引っ張って行った感覚の方が強いな。やっぱりね、昔は「ヒップホップ・サイド」の俺と、「それ以外」の俺、言うなればハウスとかテクノとかソウルとかじゃなくて、「ヒップホップ」と「それ以外」の二つしかなかったんだ。だから、「ヒップホップ・サイド」の表現をする時はONOちゃんを信頼して、全て任せてたけど、今回に関してはさっき言ったみたいに全て入ってきてるから、ダンスミュージックから受けたフィーリングとか、「ヒップホップ以外」のフィーリングも入ってくると、「今回はこのトラックでは歌いたくない」っていうのもあったし、俺が書いたリリックでも、「これは今回のアルバムには相応しくない」って消えてったものもあるから…… ものすごく丁寧に作ったね。




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