INTERVIEW
BY YUKO ASANUMA

O.N.O
#4[旅とインスピレーション Pt.2]


● やっぱり外部のエンジニアに頼まずに、全て自分でやったのはONOさんの希望でもあったわけですよね?

うん。俺が、エンジニアに任せたいと思っている部分もあって、それを今回トクちゃん(HeartBeat)にやってもらったんだけど、ONOスタジオで30も40もあったトラックがどんどんまとまっていって、リズム隊、鳴りもの、ベース、ラップ、くらいにまで最終的になったときに、最後にトリートメントする作業っていうかね、トラック一つ一つをさらにもうちょっと磨いていくっていう作業をお願いした。本当にミックスだけをプロでやってる人だからさ、そこでしか分からない音っていうのがあるわけ。そこを調整するっていう作業は、エンジニアと一緒にやりたかったんだよね。ほんとに最後の部分、曲はこれ以上いじっても変わらねえ、っていうところの話。そこだけは専門のプロに任せる方がいいんじゃないかって思って、やっぱりそうしてすごく良かった。

● BOSSはHerbest Moonやったり、J.S.S.やったりした経験があって、しかもやってるうちに全部一緒になってきたって話をしていたんだですけど……

ワッハッハ!

● そういう意味ではそれらの集大成みたいなものだって。

うんうん、そうかもね。でもさ、よく勘違いされるのが、音もHerbest Moonを経て、とかJ.S.S.を経て、みたいなこと言われるんだけど、音は経てねえんだよな(笑)。

● そうそう(笑)。だから逆に、ONOさんはどういう経緯で今の音に辿り着いたのかな、って。ソロの活動ですか?

そうだね、ライブ。ソロのアルバムを出したことよりも、ソロでライブしに日本中を回ったことが一番大きいかな。それもあるね。ハコでの鳴りっていうところとか、感情を音響で体感させるところとかね。曲の方向性はHerbest MoonやJ.S.S.を経て来たBOSSのリリックの影響がある。

● 旅に行くのはなぜですか?

俺の場合は、結果として音楽に繋がるっていうだけで、直接関係ないっていうか、俺の人生経験の一つなんだよね。ただの旅好きなんだ。なぜ旅に出るかって言うと…… 旅ってね、全部詰まってるからね。行き当たりばったりで、違う常識で生活している人たちがいて…… さんざん旅してさ、結局帰って来てヘッドホンしながらその辺歩くと、角曲がって「あれ?こんな風になってたんだ」とかさ、発見したりするんだよね。ほんで、日差しとか入って来たらさ、ぽや〜んとして、「あ、旅と一緒だな」なんて思ったり。結局この辺でも一緒だったりする。俺の旅って街歩きだからさ。街をひたすら歩き回る。もう隅々まで歩いたり、ローカルの乗り物に乗りまくってみたりとか。ここにいたらやらないことなんだよね。でも旅から帰ってくると、旅と一緒の感覚でその辺の公園にぼけっと座ってみたりしてるわけ。そんなことがあったり、とかさ。

● うんうん、分かりますよ。自分の生活圏の外に出ると、何てことないモノでもすっごい観察とかしちゃうんですよね?

そうそうそう!「これ何?」、「これどうすんの?」とか、「前からすんごい人が歩いて来ました!」とかね(笑)。観察だよね。それが楽しい。

● でも、そういう観察力がつくっていうことは、感性を鍛えているってことなんじゃないですか?

そう!感性を鍛えるよね、旅は。そういうことですね。どこでも、知らない土地を歩くのは面白いよね。普段いる場所でも、よーく観察したら面白いんだろうけど。

● でも、観察することを忘れちゃうんですよ。

ね、そうかもしんないね。今回はね、俺はヨーロッパ行ったよ。東南アジアとはまた違って面白かったね。早足だったけど、北欧とイギリス以外は結構一通り行った。ポルトガルから、チェコまで。ベルリンが一番長かったけど。

● ベルリン面白そうですよね。

ベルリンはクラブが面白いんだよ、ほんとに。俺はアンダーグラウンドだった頃の各都市のクラブとか知らないけど、多分そういう感じで、まだ非合法感たっぷりでさ(笑)、クラブ探すのにめちゃくちゃ苦労する、みたいな。昔のレイヴじゃないけどさ、フライヤーの情報だけ頼りに行ったら全然どこか分かんねえ!って。「この廃墟の奥の奥に人が行った気がする……」なんて言って、入って行って重い扉開けたらみんながウワァァァァーーってなってて!その非合法感が健全だなっていうかさ。超面白かったよ。「何でもアリ」感がハンパなかったね。


ヒップホップと活動姿勢

● ヒップホップをやっているというこだわりはありますか?それともそれは重要じゃなくなってきてますか?

うーん、どうなんだろう?Tha Blue Herbでやることに関しては…… ヒップホップでしか分からないカッコ良さってあるじゃない?ヒップホッパーにしか分からないっていうかさ、そこはやっぱりゴリゴリ出したいよね。そういう意味ではこだわってるけど、俺らの音楽がどう呼ばれようと構わないっていう気持ちもある。そんなのどうでもいいっていうかさ。言ってしまえば、シーンもどうでもいいってことなんだけど。ただ、ヒップホップ的なカッコ良さっていうのが、美学としてのヒップホップっていうのは大事だし、それがカッコいいと思ってやってんだから。

● でも既存のヒップホップの枠には捕われていないというか、新しいことに挑戦していますよね。

それがヒップホップを作ってるってことになる。そのつもりでやってるんだから。俺、焼き直しは嫌いだし、「伝統芸能」をやる気はさらさらないから。

● ヒップホップ的なカッコ良さにこだわった上でこういうものを作っているっていうのは何か嬉しいですね。

そういう意味ではさ、俺の中で「PHASE 3」なんて超ヒップホップな曲なわけ。俺は常に最新でいたいからね。音そのものとか、曲そのものとかじゃなくて、それは姿勢なんじゃないかな。「俺はヒップホップ作ってるつもりはねえ」って言っちゃったら、それはもうヒップホップじゃないからさ。ヒップホップ的なカッコ良さが好きで始めてるからさ、それは続いていくんじゃないかな。ヒップホップのつもりでやってるっていうか、それはもう当然で、それ以外にないから、逆に意識すらしてないっていうかさ(笑)。あえて言うことでもなくなってるんだよね。




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