ILL-BOSSTINO(THA BLUE HERB) MONTHLY REPORT 2007.09

はい どーも。

8月が終わりましたな。長かったリリースツアーも同時に終わった。6月8日の北見から全20カ所。無事、
事故もなく最後まで走り抜けられた事にまずは感謝。そして各街集まってくれたオーディエンスの皆、手伝って
くれたスタッフ、チームメイトの皆、何度も何度も言ってるが、本当にありがとうございました。例によって、
礼に始まり、礼に終わるのが札幌スタイルだぜ。

なんせこっちは2年半ライヴやってなかったんでさ、今思えば、ビビっちゃいなかったが、不安はない事も
なかった。人前であの無数のライムを、声、ノドで留まらずに表情、目、手、足、全身を使って聴き手の心まで
届ける事ってのはね、結構大変なんだ。口だけ野郎には絶対出来ねえ。それが俺と大の2対500、時には
2対1000とかのドデカイステージになってくるとね、もうかなり大変。消耗の度合いがマジで半端ない。
そこまで行っちまうと最早きれいにやるとか、間違わずにラップするとかの次元じゃない。頭がトランスして
ライブの間とかはほとんど意識が静かにぶっ飛んでる。わかるかなあ、この感覚。わかって欲しいなあ。
とにかく何度も何度も大と練習、ライブ、練習、ライヴを繰り返して、その間に体で半ば無理矢理憶えた部分が
そこでは、底では生きてくるんだ。むしろそれだけと言ってもいいかも知れない。頭は使っているように見えて
実はもの凄く冷静で、プログラムを叩き込まれた肉体で無意識にやってる感覚やね。じっくり頭使ってる時間は
ないんだ。考えてっともう次のバースがやってくる。もたもたしてっと全然間に合わない。次々ビートが前から
やってくる。もちろんDYEも容赦しねえ。俺を次々追い立てて歌わせる。考えてやってたら絶対ついていけねえ
領域でのラッピンに次ぐラッピン。感じる、その箱やお客の雰囲気を感じながら歌詞の世界にどっぷり浸かり、
感情を爆発させ、また冷静になり、感情の破片を集め、高ぶらせ、そして爆発させる。これをひたすら繰り返す。
楽な仕事はどこにもないが、ったくハードな稼業だぜ。

これを何度もやってっと自信とかいうものよりも先にある心の落ち着きが得られる。「ここまでやったんだ。
後はなるようになるさ。」っていう気持ち。そこに行くために(いや、行かなくてはならないからこそ)大と
ずーーーっと練習してきた。それこそ黙々と。同じ事を繰り返し、隙間を探し、手を加え、無駄をそぎ落とし、
同じ1つの作品を創ってきた。ライヴが終わった直後、狂乱のバックステージでも何度も真顔で二人だけで修
正点を話し合ってた。帰りの飛行機でも、バスでも、地下鉄でも、オフでも常に次のライヴに気を配ってきた。

それらがあったからこそあの20回のライヴがあった。集まった皆の期待がやがて、高揚に代わり、沸点を迎え、
ゆっくりと醒めて行き、感謝の時間までをきっちり取り仕切るあのライヴがあったんだ。あの宇都宮の灼熱のス
テージもそれら長い修行の最後だったからこそ乗り越えられたと思う。あれがツアーの最初だったら最後まで
行けなかったかもとか思う。まあ結局はさ、いつ、どんな時でもやる事やってるやつが正義なんだよ。

3年ぶり3回目の出場のライジングサンロックフェスティバル。今回は1番デカイサンステージ。愛するホームタウン
札幌で、このタイミングであの場所でやれるってのは感慨深いものがあった。札幌の古くからの友人、オーディエン
スの中にも特別なものとして受け止めてくれてる人が多いのもよくわかった。俺も大も肌でビッシビシ感じてたぜ。
凍てついたあの時間、静かに待っていてくれた君等の心が青白く燃え、やがて勇気に姿を変え、ステージまで届き、
俺等をしっかりとあの場所に立たせていてくれた。それも最高に誇り高く。皆、本当に、本当にありがとうな。素晴らしい
瞬間の連なりだった。実際「なるようになるさ。」とは言っても、でももしならなかったら?という不安もあった。
もしここを落としたら次にどうすりゃいいのか俺にはわからなかった。これまでの全てを失ってしまうかもっていう位の
えげつないプレッシャーだった。もう何ヶ月もその瞬間のことを考えていた。待ちこがれてはいたが、同時に恐れも
つきまとってきた。だから練習した。当日も練習した。どうにか気持ちを落ち着かせ、引き返せない土壇場、丑三つ時、
あの化けもんみてえなステージを征服するべく勝負を挑んだんだ。充実した時間というのはあっという間に過ぎるとは
まさに真理で、気付いたらもうセットの後半に差し掛かっていた。目の前に広がる無数の人達、一人一人の目を見つめながら、
しっかりと落ち着いて50分、やるべき事、言いたい事の全てを終え、感謝を伝え、笑顔でステージを降りる事ができた。そう、
これまでの19回のライヴと同じく。詰めかけた全ての目撃者達よ。あの晩初めて出会った友人達よ。あの夜は言った通り
もう既に毎日の空気に溶け始めているが、俺等はあの場所で確かに出会っていた。あれは本当にあった話だ。広い銀河、地球の上、
あの場所にたまたま居たとしても、心が閉じていたり、寒さで震えていたり、他の事に興味が向いていた人達には全くあの特別さが
わからないくらいの繊細な50分だった。あの時間に価値を見いだしてくれてありがとう。また遊ぼうぜ。あの続きはまだある。
言っておくがあれはまぐれじゃねえ。あれが俺等THA BLUE HERB SAPPORAWのライヴだ。

そこからの2週間、仲間の結婚式があったり、BIG FUNという野外パーティーに行ったり(久々だったが楽しかった!
皆が素晴らしいパフォーマンスだった。)、GOMAちゃんと飲んだり、ひたすらレコード聴いたり、高校野球の決勝の
奇跡を目撃したり(凄かった。やっぱ諦めちゃいかんな。)、短かったがなんせ久々のライヴのない完全オフの週末
だったんでね。飲みまくってました。今年は札幌も夏らしく気持ちいい天気が続いて、束の間の休みを満喫していたよ。

そして・・・また始まる。10月の金沢までの秋のツアー、LIVE STORYの幕開け近し。今は大と再び練習の日々。頑張るぞおおお。

皆も健康で。 
ILL-B