ILL-BOSSTINO(THA BLUE HERB) MONTHLY REPORT 2009.02
2月です。こっちはかなり寒くなってます。でも今年、雪は少ないな。1月は例のDVDの制作、発売までの段取りで忙しくしてました。いやまじでね、
本格的に自分等で全てやらなくてはならなくなってさ、ほんま大変っすわ。今まで俺等、どれだけ色んな人に助けてもらってたかが身にしみて解るよ。
ジャッジを下さなくてはならない場面も多くなったし、その責任も全て自分等でかぶらなくてはならないし、お遊びではすまされないシビア極まる毎日
でした。でもまあ、このご時世、仕事があるだけ幸せだと思うし、挑戦こそが俺のオファーの条件ってね。頑張って良い作品を残していきたいと思う。
2005年夏に出した「THAT'S THE WAY HOPE GOES」以来のTHA BLUE HERBの映像作品が、いよいよ制作大詰めの段階にさしかかってます。
タイトルは「STRAIGHT DAYS/AUTUMN BRIGHTNESS TOUR '08」。2枚組DVD、豪華ブックレットが付いて4500円。発売日は3月25日。
3月18日からは、当ウェブのオンラインショップで限定先行発売します。ウェブ通販のみ、特典として未収録映像をまとめたDVDを付けます!!!
これは数に限りがあるので、なくなったら終わりなんで、どうしても!って人はお早めに。
撮影、編集、監督は前作と同じくFAR EAST SKATE NETWORKの盟友、森田貴宏氏。昨年秋に行われた"AUTUMN BRIGHTNESS TOUR '08"の
模様に完全密着した内容です。彼自身、夏に自らの作品(傑作)発表して、スケートやっと思う存分出来るってタイミングで、俺がいきなり「森ちゃん、
ツアーやるから全部の日程付き合ってよ」なんて言って、ツアー全部撮影してもらってさ、帰ってきて、これでスケートやっっと思う存分出来るって
タイミングで今度は「春に発売するからもう編集してよ」なんて言って、もう年末、年始も関係なく、いつ電話しても作業中でした。マジでリスペクト。
製品は2枚組。1枚目はツアー初日の仙台から、宮崎までの全行程を収録。東北3県から始まり、関東をかすめて、東海から北陸へ、西の都から四国に
渡り、広島、そして九州を縦断する長い道のり。一つとて同じではなかった夜達、最前線での各街のオーディエンスとの命のやり取り、連日のステージ
までの準備、そして後片付け、移動の間の風景、つまりはあの秋の日々のオンとオフの全てが映っている。オープニングアクトを務めてくれた札幌の若き
MC達、その名もNORTH SMOKE ING、そして専属PA、ツアーマネージャー、更に各街の同志達との人間関係を背景に、THA BLUE HERBと名乗る
1個小隊の人間性の深くまでカメラは入り込んでいる。加えて森田監督の鬼の編集が炸裂!THA BLUE HERBを語る上で決して外すわけにはいかない、
ステージ上でのいつものストイックさと、日常の「笑い」。もう俺等(つまり実物の俺等ね)、噂やイメージじゃなくて、あくまで生身の、実物の俺等と
会ったことある人はほとんど知ってくれてると思うけど、最初はいつも驚かれたり、意外な顔されたりするんだけど、「笑い」はTHA BLUE HERBに
とっては、とても重要な要素だ。俺等と森田監督を最初に打ち解けさせたのも「笑い」かもしれないな。あの1997年以前、あの札幌のどん底の日々、
O.N.Oと仲間達との間にも、いつでも「笑い」はあった。「笑い」があったから乗り越えられたと思う。そして時が過ぎ、陽が当たって、各街の仲間達と
俺等を出会わせたのも、最初は音楽であったかも知れないけれど、今の深い仲に結びつけたのは「笑い」かもよ。俺も人間だからさ、最初、顔を合わせる
までその人に対して、色んな先入観が支配している。でもすぐに「笑い」を同じ目線で共有できる人なんだって分かった途端、俺は、その人が仮にどんな
MCだろうが、どんな身なりをしていようが、昔どんな確執があろうが、目の前のその人から受けた直感を信じる。信じて、心を開いて、話してきたし、
事実、その「笑い」がバシッと合ったから、自然と、ものすごく仲良くなれた人が沢山いる。知ってた?俺等、最高に「笑い」が好きだよ。意外かな?
ここまで俺等の内面に踏み込んだメディアは今までなかったと思う。別に意識して隠していたわけではないけれど。あの秋の日々、俺等は何日も同じ車に
乗って、同じ飯を喰って、同じヤマを乗り越えてきた。ステージでパフォーマンスを披露する側、そしてバックアップする側、進行をサポートする側、
皆、それぞれの仕事を抱えていた。皆、一杯一杯だった。そしてその間、寡黙にカメラは回されていた。カメラを意識して、クールに作為的に振る舞う
余裕なんて、あの苛烈なスケジュールにはどこにもなかった。でも、笑いは常にあった。だから俺等は本当に自然に映っている。画面の中、ありのまま
生きている。疲れてたり、居眠りしたり、へこんでたり。笑ってたり、笑わせてたり・・・。気付けば森田貴宏のカメラと向き合って、今年の5月2日で
ちょうど10年だ。長い時間だ。ここまでの付き合いになるとは最初は思わなかった。でも、事実、10年経った。ある時は俺等のホームの札幌で、また
ある時は彼のホームの中野で、そして日本各地の真夜中の現場で、ニューヨークで、彼は俺を撮っていた。お互い、よく話し、議論し、性格も少しずつ
理解し、同じ部分、異なる部分も理解してきた。THA BLUE HERBの思想を信じて、変化を共感して、体一つでずっとカメラを担いで、俺がラップする
のと同じ時間、撮ってくれている。そして何よりも、無数のオーディエンスと過ごしてきた歴史を、つまり誰かが去り誰かが新たに加わることを、延々と
繰り返す長い長い歴史を、ずっと俺等と森田貴宏は共に歩んできた。今では仕事のスケールも随分デカくなったけど、年もとったけど、地元も離れずに、
お互いの距離は変わらずに、相変わらず笑いが好きで、笑えねえ仕事は一切しねえで、笑いが合わないヤツとはつるまねえで、ここまで生き残ってきた。
話がそれた。DISC 1はそんな毎日の繰り返し。晴れの日、雨の日、良かった日、良くなかった日、初めての街、久しぶりの街、よく行く街、満員の街、
ガラガラの街、時と場所が、いつ、どこであれ、やるべきことは一つだけ。つまり各街のオーディエンスの前で魂を焦がす毎日。徐々に蓄積されていく
疲労や挫折感、そしてそれを少しだけ上回る希望と達成感。探し続けるがなかなか見つからない、送り手と受け手が、完璧に、共感を、熱狂的に共有する
「秋の輝き」。そして終わりがないかに見えていた果てしない道のりの、はるか地平の向こう側にやがてぼんやりと見えてくる1つのキーワード。ツアー
ファイナル、東京リキッドルーム。仙台、盛岡、青森、宇都宮、浜松、金沢、京都、高松、高知、松山、広島、福岡、長崎、熊本、鹿児島、宮崎の16
ラウンドを終え、自信と、しかし消えない不安を忍ばせながら、最後にそびえる巨大なヤマ、東京リキッドルームに向かって旅立つ時点までがDISC 1。
DISC 2はファイナル、東京リキッドルームでの伝説になった夜。ツアーのどん詰まり。これ以上はない最後の大立ち回り。これは先に言っておくけど、
最初から最後まで全て収録したかったんだが、権利関係が入り組んでいて、2曲だけ収録出来なかった。すまん。ま、その2曲はそこでしか、底でしか
聴けない曲ってことだ。この世界、そういう曲もあるってことよ。そう理解してくれ。そうは言っても全26曲。超重量級なんで、ご安心を。あの熱い、
心が開かれたオーディエンス達との一進一退の魂の交換。ずっと探していた「秋の輝き」は手に入れることが出来たのか?そしてその輝きの明るさとは?
’07年の春「LIFE STORY」リリース後、DJ DYEと2人でマジで数えきれないステージを駆け抜けてきた。恐らくここで毎月語られる内容のほとんどは
その月のLIVEについてであったはずだ。一体そこにいてくれたオーディエンスの何人がここを見てくれているのか?何の話をしてるのか、皆、理解して
くれるだろうか?色々思ってはいたが、毎月、そこにいてくれた人に感謝する繰り返しだった。そんな毎日だった。俺等が生き抜いてきたのは。再び
LIVEの映像が世に出ようとしている今、俺は見送ってきた、今はもう過去に埋没してしまっているあの夜達を思い起こす。どの夜も同じではなかったし
その夜の全てをDVDに収録しているわけじゃない。映っているのは無数の夜達の、ある視点からの一つの断片に過ぎない。しかし、そこには、底には、
確実に、これまでのTHA BLUE HERBの歩んできた、ノンフィクションの、完全実録の、あの10年を超える、長く曲がりくねった道のりの延長線上に
実在するドラマが映っているんだ。それは、他でもなく、一緒に居合わせた君等1人1人のオーディエンスと培ってきた、壊れやすくも、気高く、繊細な
関係そのものだ。バカにされ、冷やかされても絶対にやめなかった、やめさせることが出来なかった、親愛なるオーディエンスとの信頼の醸成の過程だ。
そしてその過程は、1夜ごとに1つの結果を産んだのだ。あの鳴り響く拍手。満ちる理解と共感。1MCと1DJだけで、つまりは人間2人分の言葉と音
だけで、無数の人間と向き合ってきた。失敗もしたし、全ての人とシンクロ出来たとは言わない。ただはっきりしていることは、与えられた時間、正直に
言いたいことを全て言い切ってきたってこと。それが正義か、真理かは、そこに意味があったかは、よくそこで、底で言ってきたけど、全て後々の歴史が
決める。ここに俺は残しておく。この時代、この時間、日本に残しておく。自分等が生きた証拠映像を。オーディエンス達の真剣な想いが創り、支えた
時間を。笑いと涙、あらゆる感情を。共感が唯一絶対的に支配する、あの輝く美しきエンディングを。はっきり言うけどさ、マジで一見の価値はあるぜ。
そして今月はいよいよ「SEASONAL BEST」シリーズが完結します。去年の春から季節毎、続いてきたこのDJ DYEのミックスCDシリーズも遂に冬を
迎えました。「SEASONAL BEST:WINTER」、オンラインショップでの先行発売が2月10日。店頭発売が2月16日です。今回もかなーりドープな
ミックスとなってます。標高5000mのチベット高原を思わせる、札幌のコアなダンスフロアーではクラシックとなっている曲から始まり、修行僧の
歩みの如く、寡黙に、ストイックにミックスは綴られます。そこから最後はいつもの日本のダンスフロアーまでの、冬の脳内音楽旅行。お楽しみに。
健康で。
ILL-B