ILL-BOSSTINO(THA BLUE HERB) MONTHLY REPORT 2010.05

もう5月。

遂にこの知らせを伝える時期がきた。

もう2010年5月。あれから3年経った。「LIFE STORY」をリリースしてから。第3段階目「PHASE 3」も色んなエピソードを含みながら、今日まで
辿り着いた。今年のライブのブッキングも既にがっつり入りました。ありがとう。もうこれ以上はお受けすることはできません。そして、それらは単なる
その夜で完結するライブではないのです。全ての夜は一連の流れの中に点在しています。ある一点に向かって走り出すことになるのです。そうなのです。
繰り返すのです。またも、再び、それはまだ先のことですが、1つの終わりが近づいてきているのです。DJ DYEと2007年6月8日の北見HOOPLAで
スタートした「PHASE 3」のライブ行脚の旅。150カ所以上の街で、数えきれない友人と、同じ時間と場所を分け合ってきました。

そして・・・、


今現在、我々は「PHASE 3.9」という段階にいるのです。

今後のライブスケジュールは随時、発表していきますが、秋には確実に終わりはきます。ライブを休止し、制作のみに専念、没頭する時はやってきます。
無論、4枚目のアルバムを完成させた時点で、ライブは、再開はするとは思いますが、それは近い未来ではないことだけは確かです。1MC1DJの限界を
探し求め、隙間を探し、練習と本番を、破壊と再構築を重ねてきた、我々THA BLUE HERB「PHASE 3」の時点での最後の姿を、ステージでの散り際を
それぞれの街、お近くの街で見届ける準備を整えてほしい。共に歴史を創って、残したいと願って、俺等はまた終わらせるための準備を始めています。



3月にここで言っていた通り、Tーシャツの売り上げをハイチに寄付してきました。売り上げが764,000円。そこから制作費、運送代、バイト料、
431,000円を引いて333,000円を日本ユニセフ協会に寄付してきました。振込金受取書はこちら




4月はライブ4本。福岡分は来月。どこも味わい深かったな。誰も台本を書いてはいないが、全てがハッピーエンドな、ドラマティックな夜だったよ。

福井。ここんとこ毎年呼んでもらってるな。思えば2000年、まだPHASE 1の時点で、俺等は呼んでもらってたんだ。あの頃、まだ日本の殆どの人が
俺等のことを知らず、俺等も彼等、彼女等を知らなかった頃、俺等と福井のオーディエンスの歴史は始まっていたんだ。夕方に新千歳を離陸し、小松空港
に着陸。そのまま一路福井へ。辺りはもう暗くなっていたな。箱はもちろんここ、DJ AKAKABEの待つ、CREME。毎回、ダイが音作りに苦労してる箱
だけど、今回はもう何度も行ってるってことでわりとスムーズに完了した。で、飯。オープン前の福井の仲間、恭一が新たに始める店で、極ウマの鯖を
いただく。仲間が大勢集まって、ワイワイ笑いがあって、マジで良い時間だった。恭一頑張れよ。で、本番。着くとAKAKABEとSKE-13、KENTWILDの
ライブが。いつも俺等のライブの前にはこのメンツ。恭一も混ざって、良い感じで俺等に繋いでくれた。上がったぜ。で、登場。目もそらせない至近距離
から言葉をガンガン撃っていく。受け止め、叫び声で返すお客。昔、それこそ10年前に来てくれていた人は1人でもいるのだろうか?それとも次々と
入れ替わっていって、もう何巡目なんだろうか、とか何気に考えている瞬間があった。福井、リリースタイミングでもなく、テレビでお馴染みでもない
俺等に機会を与えてくれて感謝です。そこにいた皆が、10年前から聴いていてくれた人でも、初めての人でも、これからも皆のアンテナに引っかかる
音楽を鳴らしていくように努力を続けます。最後まで聴いていてくれてありがとうございました。100分のヤマを超え、ステージを降り、福井の仲間と
いつもそうしているように話し、笑い、酒を飲む。あのCREMEの閉店間近の輝きに満ちた雰囲気が俺は好きだ。楽しかったっす。また遊びましょう!

少々の二日酔いを引きずり起きる。外は快晴。恭一の車に乗って、大阪のヒップホップ黎明期のオモロい話を沢山聞きながら、蕎麦を食べに行く。ここは
去年始めて行って、やられて、今回の1番のリクエストだった店。ほんと旨い。ゴチでした。で、駅へ。名残惜しさを握手で断ち切り、別れる。京都へ。

京都。THA BLUE HERBの(1999年に初めて行って以来、勝手に決めた。)第2の故郷。ちょうど1年ぶり。1年間も来てなかったのって久々かも。
故に燃えてたぜ。リハに時間をかけたかったんで、駅からウーピーズに直行。この日はPAのサニーさん、照明の畠中さんにも来てもらっていた。つまり
TBHの完全布陣。もう何度となく俺等のライブを観てもらっている京都のオーディエンスに、今の俺等のライブの全てを観てもらいたかったんだ。いつも
の2人の言葉と音のコンビネーションに、音響と照明が完璧な間合いで絡むと一体どんなマジックが起きるのか、を。なのでリハの時点から緊張感が
張りつめていたな。リハ後、東京からのゲストK-BOMBとJUBEと久々の再会。奴等と遊ぶのもこの日の楽しみだったんだよ。上がったね。で、先に宿で
休んでて、皆のリハ終わりで行く予定だったんだけど〜、無理、もう我慢できない!行っちゃおう!ってことで龍門へ。ここも京都のお楽しみの1つ。
今回も外さない、味の違い。どれ喰っても旨い!ホンマに旨い!で、皆も合流、K-BOMBのトーク炸裂しまくりで、大騒ぎ。で、本番。LEFTYのスーパー
ドープなライブ後、登場。一声目からオーディエンス大爆発!半端なかったね。京都、君等凄いよ。あの熱気にはトバされたよ。ま、俺等も鍛えまくって
るから、倍にして返したけどね。で、皆もそれを受け止めまたとんでもないテンションで返す。そんな相乗効果が奇跡的に融合していたね。皆、最後
まで聴いていてくれてありがとうございました。言いたいことがありすぎて、ステージ降りると110分経ってた。素晴らしい時間だったね。終わって
からはいつもの面々と、いつものノリで、ワイワイ遊びまくってた。爆笑に次ぐ爆笑で、翌朝、声出ないくらいはしゃいでた。小谷、お疲れさん!

で、二日酔いどころかまだ酔っぱらった状態で起きる。外は快晴。この日は花見。去年と同じく京都木屋町クルーと花見!満開の桜と、心地よい達成感、
そして皆の笑顔とウェルカムな空気にすっかり遊ばせていただきました。K-BOMBとJUBEとも随分話したな。最高な時間だった。京都ホンマおおきに!

東京。2010年の前半の絶対に落とせない重要すぎる山場、KAIKOO。ぶっ飛んだ音楽家と音楽愛好家が山ほど集まるこのパーティーで、埋没せずに
どれほどのインパクトをオーディエンスに残せるか、もうずっとダイと考え、議論し、構築し、練習してきた。持ち時間は50分。この50分にここまで
かけるか、と本人達も笑えるくらい準備してきた。ま、準備に関してはいつものことだけどね。とにかく、特別な想いが自分の中で沸き上がっていたよ。
前日に東京入り。で、俺は1人、二子玉川のスタジオに向かっていた。待ち合わせていたのは、そう、クラムボン。大助君、郁子ちゃん、ミト君。そう、
あの曲のリハーサルのために!もう何て言うかさ、早く鳴らしたいって感じで、ワクワクしてたね。で、合わせたんだけど、もうその時点で、全員鳥肌が
半端ないことになってた。おいおい、ちょっと待て、落ちつけ落ち着け、ふーっ、ヤバいな、これは、って。で、もう1回やっちゃう?ってやってもまた
鳥肌がゾワッってなって、おいおいおいおい、やっぱ間違いない、大変だぞこりゃってなって、もうリハやめよう、明日に取っておこうって笑ってた。
ちょっと今夜寝れっかなって思うくらい上がっちゃってたね。で、クラムボンと別れ、俺は今度は恵比寿のスタジオへ。そこでダイと今回のPAさんと
TBHのリハ。こっちは揺るぎなし。よし、寝よう。って宿行ったんだけど、中々眠りが浅かったね。で、当日。会場に行く前に声を作っておきたかったん
で照明さんを交えてもう1回、リハ。万全。で、会場入り。フェス独特のあの空気が溢れてて、自由な芸術解放区って感じになっていた。控え室に荷物を
放り投げて、すぐにうろついてた。ちょうどNORIKIYOとBRON-Kのライブが燃えてた。袖にはJOEもいて、久々の再会、談笑。JOEとこうして、同じ
場所と時間をお互いの音楽で分け合う時が来たことに上がったよ。次から次と現れる同業者でありライバルであり、友人でもある皆と握手、談笑。そして
B.I.G. JOEのライブを久々に観る。本当に久々だ。一時期は俺が一番観ていたってくらいだった。同じステージにもいたことだって多々ある。懐かしさは
なかったな。現役のライブだった。熱かった。彼を今現在支えてるオーディエンスとの歴史は始まったばかりだ。これからの一層の発展を祈ってるよ。

ライブを楽しんだのはここまで。さあ、準備をしよう。俺もライブをしに来てる。春海埠頭は静かに暮れていってる。控え室には既に出番を終えた人の
安堵感と、これから出番を迎える緊張感の両方があった。TURTLE ISLAND、クラムボン、逃れられない強者達がその時を待っている。愛樹に先に行くと
挨拶し、クラムボンにはまた後でと言って、ステージ袖に向かった。NICE VIEWの轟音が。一瞬の静寂の後、ダイが登場。そして歓声が聞こえてくる。
TRANS SAPPORO EXPRESSの到着だ。ステージに出ると・・・、彼方までのオーディエンスが。1人1人の、それぞれの暮らしの中の時間、この場で
俺等は待ち合わせしたんだ。CGもバックダンサーも、派手な仕掛けも何も使わずに、たった2人で、突き詰めれば透明な言葉だけで、この時間を、この
パーティー全体をも、この気温や空の色すらも、特別なモノに変えるんだ。押し寄せてくる無数と言っても良いくらいの期待と、突き抜けたいという渇望
にも似た叫び。体二つで受け止め、重心を低く保ち、全身を使って、じわじわと押し戻していく。言葉そのものの響き、そしてそれが持つ意味、そこから
の問いを、中空にぶちまけていく。届くと信じて。肯定されると信じて。皆同じだと信じて。解ってもらえると信じて。1つになれると信じて。畏れず
媚びず、振り返らず、一気に駆け抜けた50分。皆、本当に皆、最後まで聴いていてくれてありがとうございました。特別なことは何も言っていない、
簡単で便利なものでもない、むしろ危ういものかもしれない俺等の音と言葉に、俺等が信じているのと同じ前向きさを見出していてくれてること、本当に
ありがとう。東京、いつもありがとう。一戦終えてステージを降りる。そのまま控え室まで歩く。極限まで張りつめていた何かがゆっくりと溶けていく。
皆と乾杯し、一杯だけ飲んで、俺はまたヘッドフォンをし、1人になる。もう1つ大きな仕事が残ってるんだ。これをモノにしねえと意味がねえ。まだ
終わってない。さっき降りたステージの袖に再び俺はいた。さっきのと同じくらいの緊張感と共に。そして郁子ちゃんのイントロが。それから7分余り。
何と言って良いのかな。人生でもそうはない、後になって言葉で説明がつかないことの1つだった。凄いとか素晴らしいとか幸せだとか楽しいとかとかっ
て類いの感情なんだけど、もう1つ、言葉にならない、未だその言葉を知らない、得体の知れない巨大すぎる何かに包まれていたって感じかな。伝わんな
いか。わり。とにかくその7分間はあった。たった7分だけど、時空を超えた、永遠の、入口から出口までの間のワープだった。って抽象的すぎるか。

小さな画面と音量で、あの場にいた皆で創り上げた高揚感の全てが伝わるとはもちろん思ってはいませんが、ツアーレポートにその時の動画あります。

気付けば、最後のNUJABESの曲を聴いていた。永遠のメロディを、一時の永遠を夢見せる東京の夜景を、家路に向かうオーディエンスを、眺めていた。

よしっ、荷物を片付けるか、と楽屋に向かう途中、もう1つのステージから、あの、聴き慣れた賑やかな歌声が。マジで?これってTURTLEっしょ、まだ
やってんの?駆け足で向かうと、いやはや、そこは、もうこれもこれで何と言って良いのか、緻密に計算され、無機質なコンクリートに塗り固められた、
春海埠頭ターミナルという、言わば綺麗に覆い隠されたシステムの権化に反抗するがごとく、人間しか持たぬ手と足を動かし、踏み、跳ね、叫び、汗を
飛び散らしながら、ありったけの生を結集し、無くなっていく時間を、文字通り必死に、燃やし尽くそうとしている人間どもがウジャウジャいた。ったく
凄え。で、いつもの通りの感じで着地〜。あ〜楽しかった。荷物をまとめ、楽屋を出て、皆と乾杯と別れの挨拶をしながら、最後までやっていた小さな
出店で、「何で俺等の名前をシャウトしてくれなかったんすか〜。」と笑ってない目で言い続けるサ上と(ごめん!)、すっかり人間じゃなくなりかけ
てるK-BOMBと最後のハブ酒飲んでから帰りました。ヒロキ!ずっと続けてきた献身と努力は報われるってことを改めて教えてもらったよ。お疲れぃ!


今月よく聴いてたアルバム。
「MULATU STEPS AHEAD」MULATU ASTATKE (CD)
「NEXT STOP...SOWETO VOL.3」V.A.(CD)
「ENCOUNTER」WAVES(CD)
「REGGAE INTERPRETATION OF KIND OF BLUE」(ANALOG)

R.I.P. GURU.

健康で。

ILL-B